糖尿病予備軍の段階で 既にクラスターに分かれているのであれば,もしもその人達が糖尿病を発症した場合に,Ahlqvist分類のどのクラスターに対応するのかどうかは,気になるところです.
その対応が Wagner論文のSupplementで,Sankey図により示されています.
サンキー(Sankey)図とは
サンキー(Sankey)図とは,もともとは エネルギー収支などを視覚的に表現したもので,Wikipediaにも解説されているように,エンジンで発生したエネルギーが最後にタイヤに動力として伝わるまでに,どこでどのように損失が発生するのかなどを表す際によく使われます.
しかし,現在では視覚的なわかりやすさから,社会科学の行動分析や,マーケティングの顧客嗜好解析など,むしろビジネス分野で多く使われているようです.
医学分野では,疾病状態の変化(=転帰)を時系列で表す時にも使われます.
予備軍クラスターのSankey図
残念ながら TUEF/TULIP で見出された6つのクラスターのそれぞれに属する人が糖尿病を発症した場合,Ahlqvist分類のどれに対応するのか(又は しないか)という結果は得られませんでした. これは そもそも完全にデータが揃っていて追跡可能な人が899人と少なく,しかも その追跡期間中に 半分以上が脱落したからです. 残りは400人ほどですが,これでは母数が少なすぎて追跡期間中に糖尿病になった人はわずかですから,分類するに足る人数にならなかったのでしょう.
しかし,WhiteHall IIでは 最初の母数が1万人を越えているので,糖尿病発症者(それでも210人ですが)のAhlqvist分類が可能でした.
Sankey図の左端は,Wagner分類のクラスターです.線の幅は,各クラスターから糖尿病を発症した人数を表しています.
Sankey図の右端は,Ahlqvist分類のクラスターです.やはり線の幅が,各クラスターに属する人数を表しています.
全体的には,新たに発症した糖尿病の半分以上は,加齢性(MARD)又は 単純肥満性(MOD)のものでした.
しかしながら,Wagner分類で その危険性が指摘された Cluster6の人の約半数は,Ahlqvist分類の SIRD,すなわち 急速に腎症が悪化していくパターンに移行していくことがわかります.
発症者の絶対数が少ないので断言はできないですが,一見 血糖値はそれほど悪くないのに初期からインスリン抵抗性を示している糖尿病予備軍は,SIRDに進む可能性が大きいことを示しています.
[8]に続く
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