第63回日本糖尿病学会の感想[10] オンライン学会が残したもの

感想[9]は ブログ別館 に掲載しました.

初めてのWEB学会

まず,今回 思わぬ事情で,5月に大津市で開催される予定だった学会が,急遽 WEB開催となりました. おかげで5か月遅れの10月開催となりましたが,これには大変なスタッフの苦労があったと思います.最初からWEB開催の計画であったのならともかく,資料にせよ運営にせよ,まったくその準備はなかったのですから.

しかし,終わってみれば(資料の閲覧は 本日23:59まで可能ですが),『意外にうまくいったな』というのが個人的感想です.今回のWEB学会参加登録人数は 10/10時点で 9,700人ほどだったようです. 通常この学会の参加者は,東京など大都市開催の場合で,14,000~15,000人ほど,地方都市の場合で 7,000人くらいですから,盛況であったと思います.

実際にオンライン参加してみると,たしかにリアル学会のように『講演者・発表者の表情を読み取る』ということはできませんが,しかし,何よりも リアル学会では『2つの聴きたい講演があっても,時間が重なれば どちらか一つしか選べない』この制約がないのは 本当にありがたかったです. 参加者も『これでもいいじゃないか』,いや『このほうがいいじゃないか』と思ったのではないでしょうか.

数字で裏付けてみます

昨年の第62回学会(仙台)では,私が 聞けた講演は31件,発表(一般+ポスター)は74件,合計 105件でした,これにランチョンセミナーの弁当3食がついてました.この時の登録参加料は 18,000円だったので,講演・発表 1本あたりでは171 円でした.

対して 今回のWEB学会では 聞いた講演は77件,発表(一般+ポスター)は163件,合計 240件です.その気になれば,この2倍は聞けたでしょう. ランチョンセミナーの弁当はなし.これで登録参加料 10,000円, 講演・発表 1本あたりで 42 円

いやあ 関西人のぞるばとしては,『めっちゃ お得やん』と思いますね. しかもリアル学会では,スライドに 引用文献が出ていても それをメモに書き留めるのに必死でしたが,今回はそこで スライドを一時停止して,悠々と書き留めればいいのです. おかげで膨大な『興味を惹かれた文献』のリストが集まりました.

来年は 通常の学会として運営されるのでしょうが,このWEB学会の便利さは ぜひとも取り入れて引き継いでもらいたいものです.

学会に限りません

新内閣が決定した『デジタル庁』の設置を待たず,すでに官公庁がほとんどの届出書類をペーパーレス化することにしまたが,これはすぐに民間企業に波及するでしょう.

また民間企業のオフィスでも,いやおうなしにテレワークを試行錯誤でやってみたら,意外にも結構やれる と気づいてしまった.今後は,こんなに本社オフィスの面積はいらないんじゃないか,ということになるでしょう.
本社所属の社員だからといって,全員が一人残らず,自宅から何時間もかけて本社に通勤するのは時間と体力のムダではないのか,出勤前に幼い子供を保育園に預けるために 雨の日も風の日も出勤時間より何時間も早く家を出る 母親の金銭的・体力的負担は 本当に必要なものだったのか,ということになるでしょう, もちろんだからと言って本社オフィスを全廃ということにはならないでしょう.ただ 昼間に大人数が集まることを前提としていた オフィス街の不動産業界・弁当屋さん・食堂・近隣の居酒屋は,今後は様変わりするかもしれません.

コロナ禍のおかげで,今まで惰性で続けてきたことの不合理さが明らかになったわけで,こんなことでもなければ永遠に気づかなかったでしょう.

コロナ禍が終息すれば,その後はなにもかも『コロナ以前』に戻すのではなくて,『教訓を生かして 以前とは全く違うコロナ後』になってほしいと思います.


学会の感想記事は,本館・別館に交互に記載しています.

最終回 感想[11完]は 別館ブログにあげる予定です.

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