ともかく,いまのところ私は糖尿病寸前で踏みとどまっています. この9年間 よくなっているのかどうかはわかりませんが,すくなくとも ミニ耐糖能試験 を見る限りでは 明らかな悪化はしていません.
ただ現在の心境は,これをさらに良くして理想的に,などとは思っていません. この程度が持続できればそれで万々歳です. 人生の目的は楽しく過ごすことなのですから.
ただし,AST,ALTやGTPを下げる,つまり肝臓の元気を取り戻すためには何をするのが(あるいは 何をしないのが)効果的なのでしょうか?
答えの一端は やはり このシリーズでとりあげた文献にあります.
この報告は中年男性で,しかも デスクワークが主体ではない自衛官という理想的に均質な集団において,肝機能と糖負荷試験結果とを対比させた実に貴重な文献です.
何が耐糖能悪化を左右したのか
この文献では,年齢,体格,喫煙・飲酒習慣,自衛隊での階級など,影響を与えたかもしれない多数の因子について,それらの因子と耐糖能との相関関係も分析(多変量解析)しています.なお,以下にあげる表の数値は【オッズ比】です. 相対危険度ではありません. ですから
『アルコール換算で 60g/日の人は飲まない人よりもASTが4.5倍上がりやすくなる』というのは間違いです.
オッズ比と相対危険度との違いは下記を参照してください. 以下の表は『〇〇という因子はその他の因子(例えば喫煙)よりもAST/ALT/GTP上昇に大きく影響する』ということを表しているにすぎません.
また 諸因子の内,既に影響が明らかな耐糖能は除いてみています.
ASTを上昇させる因子
飲酒と[ウエスト÷ヒップの比率]が影響因子です. 注目すべきは BMIよりも体形の方が影響するのです.
ALTを上昇させる因子
やはりここでも ウエスト/ヒップ比,ついで体重が影響しています.
γ-GTPを上昇させる因子
GTPはもちろん圧倒的に酒であり,次いで(ここでも)体形です.
ウエスト/ヒップ比を下げるには
以上みたように,3つの肝臓検査数値の上昇する要因としては,飲酒と「体形」 が支配しているようです.「体形」 とは男性に多いリンゴ型肥満,つまり内臓脂肪が多いか少ないかを表しているのでしょう.
もちろん,『腹筋運動を死ぬほどやればウエストだけ細くなる 』 というものではないでしょう.
たしかに筋トレも有効なのでしょうが,自衛隊員は筋トレが職務ではありません. 平時では日々の訓練の方が職務なのです.私も実際に訓練の様子を見たことがありますが,鍛えていなければ普通の人はヘトヘトになるでしょう. 『歩行訓練』といっても,単なる『ウォーキング 』 ではありません.自衛隊の歩行とは,20~30kgの装備をしょって,山道を含め30km以上歩く,全身運動です.
ありきたりですが ,結局は 毎日よく体を動かして 内臓脂肪・皮下脂肪を減らすことが重要なのでしょう.
ウエスト/ヒップの比率が大事だというこの話を会社でした時に,『そっかぁー! じゃあ尻をデカくすればいいんですね!』とほざいたN君,今どこでどうしていますか?.
【完】
コメント
やっぱりそこですか。
しかし、糖質制限推進派には、運動(の効果)について語る方は少ないように思います。
「人類700万年の歴史」を持ちだすなら、糖質摂取量だけでなく、運動量にも言及すべきと前々から思っています。
こんなに運動量が少ないのは、現代人だけなのですから。
「人類700万年の歴史」を持ちだす以上、極論、「運動を語らずして糖質制限は語れない」と思うものの、普段、運動習慣のない私には、あまり大きな事は言えません。
唯一、これからの季節は、私の30年来の趣味であるスキーを楽しみたいと思います。
スキーと血糖値について機会があれば、投稿させていただきたいと思います。いつになるか分かりませんが。。。
何であれ,「体を動かしていること」が有効だと思っております.
「筋トレ至上主義」の人は,筋肉による糖取り込みばかりを重視しているようですが,仕事を持つ人にとっては,一日中 筋トレをしているわけにはいきません. しかし,一日中体を動かしていることは工夫すれば可能です.
私は職場でトイレに行くときは わざと別の階のフロアに階段を使って行っていました.
ホリデー様のブログのコメントにも書きましたが,私の母系家系は皆長生きですが,子供の頃から一日中農作業をしていた効果だと思っています.
農作業はいいですね。地に足をつけているのがいいのだとか…
確かに食後に筋トレをしていると、a1c は下がりました。なので、それなりの効果はあると思います。ただ、筋トレだけで全ての糖尿病解決するとまでは言えないような気がします。肝機能やホルモン全般のバランスも関係していそうですし。
どちら派も、「糖尿病を回避したい」という思いは同じなんですけどね。
私の曾祖母は,畑仕事をした後,昼寝をしていて 文字通り『眠るように』亡くなりました.97歳でした.その孫である私の母は 来年98歳. まだ畑仕事をしております. しかも「アボガドをハウス栽培して一儲けしてみたい」などと おそろしいことを口走っています.細胞ミトコンドリアは 完全に母系遺伝ですから,私も それを受け継いでいるはずです.頼もしいようなおそろしいような.
98歳!畑仕事ですか。アボガドの生産が成功して、テレビからオファーがあるかも?ですね。アボガド、食べたことないのですが、食べてみようと思います。
アボガドは糖質は少なくて、水溶性食物繊維が多いらしく、糖尿病にも適した素材らしいですね。先日テレビで、数人の健常者対象に、80種類くらいの食材を食べてもらい、その都度どの素材でとれくらい血糖が上がるのか調査していました。同じ食材でも人によって上がり幅はかなり差があり、それを決めるのは腸内細菌で、腸内細菌を決めるのは水溶性食物繊維みたいな内容でした。
> アボガド、食べたことない
『植物のバター』という感じです.ほとんど脂質ですから.
ですので,血糖値は上がりません.