信ずる者はすくわれるか

糖尿病患者は,または 健常人でも糖尿病を予防するためには,同じ糖質量でも,主として食物繊維による消化・吸収遅延効果によって血糖値の上がり方が緩やかな 低GI食品を摂りましょう,というのは日米のガイドラインが珍しく一致しています.

食後高血糖はグリセミック指数(GI)で対策[糖尿病ネット]

GI= Glycemic Indexとは

このブログを読まれる方なら よくご存じでしょうが,一定の糖質量(50g)を食べた後の血糖値の上昇面積の比率を表したものです. ブドウ糖50gの上昇面積を100とした場合の比率で表されます.

GIは法律ではありません

しかし,このグラフ,誰でもそうなるのでしょうか. GI=50の食品なら,誰が食べても必ず血糖値の上がり具合は,ブドウ糖の半分なのでしょうか? 実はそうではありません.個人差も大きいのです.

そもそもこのGIは健康な正常人で測定したデータなのです.それをそのまま糖尿病患者に適用できるものでしょうか?

糖尿病の人で GIを実際に測定してみると

教科書に書いてあるGI値は,糖尿病患者には適用できない
第55回糖尿病学会 3-P-140
第56回糖尿病学会 2-19-42
第57回糖尿病学会 2-11-6

いずれも丸岡内科小児科クリニックの報告

上記では,糖尿病の人にとっては,白米でも玄米でも,精製小麦パスタでも全粒粉パスタでも,糖質量が同じならまったく同じように血糖値が上がり,実測されたGI値は同じであると報告されています.

こういう『不都合なデータ』は,絶対に新聞・テレビや健康雑誌で紹介されることはありませんが.

日本人だけでなく,白人のデータもあります

糖尿病の患者が精白小麦パンと全粒粉パンを食べ比べたら,両者のGIはまったく同じだったという報告です.しかもこれは最初に GIを提唱したJenkins博士による報告なのです.

The Glycaemic Index of Foods Tested in Diabetic Patients

なお,低GIの食事を長期間続けても肥満解消の効果はみられないという報告もあります.

Should obese patients be counselled to follow a low‐glycaemic index diet? No
肥満者に低GI食は推奨されるべきか? とんでもない!

ただし 効果ありという報告もあります.結局はGIの問題ではなく,摂取カロリーの問題なのでしょう.嗜好,または 食べやすさ/食べにくさの差で 低GIにすることにより摂取カロリー自体を減らせたので,肥満に効果が出たものと思われます.

以前の記事 で,GIの低い玄米と GIの高い白米とで,食べ方によっては,玄米の方が血糖値があがることを示しましたが,GIを信じると 『救われる』のではなく,

足元を『すくわれる』

こともあるのです.文字に書かれた情報ではなく,自分の体で実測したデータだけを信用するのが賢明でしょう.

コメント

  1. ジェームズ中野 より:

    足元をすくわれる。なるほどです。

    • しらねのぞるば より:

      おはようございます.
      江部先生のブログで よくお見かけしております.

      こちらでは好き放題に書いておりますので,ご気軽にコメントください.