日本人はマラソン選手型
古代からつい最近までの日本人庶民は,少ない食事で一日中こまめに動き回るという生活をしていたと思われます.といっても一日中筋トレをしていたわけではありません. ごく普通の日常活動をしていただけです.持続的な運動ではありますが,激しい運動ではありません.毎日続けられたのですから. だからこそ個々には非力でも,持続力はあるのが伝統的日本人です.仁徳天皇陵はその一例です.
マラソン選手は200kgのバーベルは持ち上げられませんが,逆に重量挙げ選手はマラソン完走は困難でしょう.持続運動に 並外れた太い筋肉は必要ないのです.むしろ自分の体重の重さのために早くバテてしまいます.
日本人はインスリン分泌不全ではなくて
よく グリコーゲンは財布の中の現金,内臓脂肪は普通預金,皮下脂肪は定期預金にたとえられます. 余剰カロリーがあった時は,すぐに取り出して使える肝臓や筋肉のグリコーゲンに,それでも余剰があれば内臓脂肪に,まだまだ余るのであれば飢餓に備えて皮下脂肪に蓄える,これが氷河期を乗り切った人類の代謝生理ですが,粗食と小さな体の日本人には,皮下脂肪=定期預金にまで回せるほどの余剰カロリー=収入がなかったのです.グリコーゲンや内臓脂肪は翌日の労働で使い切る,『宵越しの脂肪は持たねぇ』のが典型的日本人だったと思います.
このような生活の繰り返しであれば,ほとんどインスリンの出番はありません.摂取した糖質のほとんどは非インスリン依存的に吸い込まれていたからです. だからインスリン感受性は高くそれほど多量のインスリン分泌は必要がない(=出せない)のでしょう.
日本人は全員インスリン分泌不全か の記事にも書いたように,糖負荷試験の個人別 生データを見ると,多くの人のインスリン分泌量が少なく,かつ遅いのに驚きます.しかし,糖負荷試験のように瞬間的に大量の糖質が体内に入ってくるというのは伝統的日本人では想定外の事態で,追加インスリン分泌が必要になると,大騒ぎになります.あわてて膵臓が製造を始めますが,とうてい間に合わない. これが外からみればインスリン分泌遅延に見えるだけ.
日本人が インスリン分泌不全・遅延だというのは,現代の食生活・ライフスタイルを基準にするからそう見えるのであって,正確にはインスリン分泌不要だったにすぎないと思います.まして多量のインスリン追加分泌が必要になるほどの多量の糖質摂取は,年に数度の正月やお祭りの時だけだったはず.お祭りの時の強飯(ごうはん)は 普段の粗食の裏返しでしょう
では現代ではどうすればいいのか
本来 痩せ型でバランスしていた日本人のインスリン感受性が低下したり,まして肥満でインスリン抵抗性が発生する,というのは,ライフスタイルと体質のミスマッチが原因と考えます.
日本人の体質が以上の通りであるとすれば,二者択一です.
古来の日本人のライフスタイルに戻る
伝統的粗食と,車は使わず,電車にも乗らず,どんなに重いものがあってもかついで目的地まで歩く.でも,これは無理ですね.とすれば;
体質と現代生活との折り合いをつける
自分の耐糖能を正確に把握したうえで 限界以下の糖質摂取量に控えるしかないと思います.もちろん,筋トレとは言わずとも 常に軽く体を動かしていることも必要です.
[その3 完]
コメント
私は、糖質15gが食後ピークを140以下に保つ限界値なので、うどん1杯で200越えですが、宴会などでアルコールを少し飲みながら2時間ほどかけてゆっくりと食事をすると血糖値がほとんど上がりません。最後に〆のご飯を食べても食後のピークは140以下を保てます。
OGTTでは2時間血糖値259、インスリンは、空腹時6.9→30分19.2→1時間28.7→2時間54.2と一直線に増えています。その後も分泌され続けたのかデータがないので定かではないですが、4時間後には低血糖(50以下)を起こしました。
インスリン分泌は30分くらいがピークになるのが普通ではないかと思いますが、私は前述のように分泌が遅く、長時間分泌されているようですから、ゆっくりと食事をするのは理にかなっていますので、優雅に食事をする事の意義を感じますが、平素はそんな悠長な事はできませんから、スーパー糖質制限です。
ぜひ、定年後はゆっくりと優雅な食事を楽しみたいものです。
因みに正常な人のOGTTにおける経過時間ごとのインスリン分泌量はどれくらいなのでしょうか。個人差が大きいのか、ネットではその手の情報がヒットしません。
>因みに正常な人のOGTTにおける経過時間ごとのインスリン分泌量はどれくらいなのでしょうか。個人差が大きいのか、ネットではその手の情報がヒットしません。
はい,この記事にも書きましたが,
https://shiranenozorba.com/2019_05_07_ins-secretion-data02/
OGTTは「糖尿病が疑われる人」が対象なので,そもそも健常人のデータがありません.
実際には「OGTTを行ったが,正常だった」というデータは 病院には残っているのでしょうが,そういうデータが公開されることはありません.
したがって,現在 信頼性のある健常人のOGTTデータというのは,鹿児島大学 の納先生のHPが唯一だと思います.
http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/shiminn-igaku-kouza/tounyobyo/3-tonyoubyo/3-tonyobyo-final.html
ありがとうございます。大変参考になりました。
と共に新たな疑問が出てきました。
健常者のOGTTのインスリン 値が一般的に存在しない(=わかっていない)状態で糖尿病患者のOGTTインスリン 値はどう言う意義があるのでしょうか。
私が健常者のインスリン 値が知りたかったのも自分のインスリン値がどう言う状態なのかの比較対象が欲しかったのと、今の自分のインスリン値は糖尿病の結果なのか、それとも元々そのような分泌だった(可能性の)結果、糖尿病になったのかが知りたかったのです。
納先生のHPをご覧になっておわかりかと思いますが,正常人にせよ糖尿病患者にせよ,『典型的なOGTTのパターン』というものは定義できないと思われます.
かと言って,多くの人の平均値をとってしまうと,納先生も述べておられるように
>これまで皆さんと一緒に見てきた26例の個々人の息の詰まるようなすざましい変化に比べ、
>平均をとってしまうとこんなにも味気ない無意味なものになってしまうことが分っていただけると思います。
>何も考えない人にこのグラフを見せると『なるほど、糖負荷テストの変化は2時間までが全てで、
>その後はだらだらとゆっくりさがってゆくだけなのですね』と、とんでもないことを言いそうな気がしますね。
となります. つまり平均をとってしまうと,『実際にはそんな人は存在しない』ということになってしまうのです.
これは数十項目もある健康診断項目で「全項目が基準値のど真ん中という人が存在する確率は,ほぼゼロ」と同じです.
この記事でも書いたように,
幻の【平均的な糖尿病患者】
https://shiranenozorba.com/2019_03_09_average-illusion/
100万円の預金を持つ人100人と,1億円の預金を持つ人100人との平均をとれば『この200人の平均預金額は5000万円弱である』ということになりますが,実際には 5000万円の預金のある人はゼロ,つまり『平均値のマジック』です.
このブログでも多くの方々から,ご自分のOGTTデータを知らせていただきましたが,それは
インスリン分泌を改善するには_探索メモ004
https://shiranenozorba.com/2019_04_27_ins-secretion-memo004/
にもあげた通り,みごとにバラバラでした.『100人の患者がいれば,100種類の糖尿病がある』と思っております.