前回記事に書いた通り,日本糖尿病学会は
専門医向けには:『短期間であれば 糖質制限食は血糖コントロールに有効である』
と解説する一方で,
患者向けには:『糖質制限食はお勧めできません』
と正反対のことを言っています.
では,両者の間で板挟みになる一般の内科クリニックの医師は どうすればいいのでしょうか? 例年ならとっくに発行されているはずの『糖尿病治療ガイド』がまだ登場していないので,本当に困っているはずです.
しかし,今や 食事内容とその後の血糖値が気になったら,誰でも リブレやSMBGで簡単に測定できる時代です.医師又は管理栄養士が『こういう食事をすれば,血糖値はよくなりますよ』と指示しても,それがその通りになるのかどうかはその日の内に分かります. 医師の指示を完全に守った食事をしたのに;
とんでもなく血糖値が上がったらどうでしょう?
この医師は,私の血糖値が悪くなるような食事を勧めてくるのだ
と患者が不信感を抱いてしまったら(私がそうでした),もはや それ以降 医師が何を言おうとまともに受け取らなくなるでしょう.
つまり,炭水化物60%のカロリー制限食が本当に 2型糖尿病に有効だというのであれば,医師の権威でどなりつけるのでもなく,難しい用語を並べ立てて説得するのでもなく,リブレで目に見える結果で示さなければ患者は納得しないでしょう. ですから解決法は明白です. 『炭水化物60%のカロリー制限食で食後血糖値が上がらず,HbA1cがみるみる良くなる』ことを ただ示せばいいだけなのです.本当にそれが可能というのであれば.
この『炭水化物60%の食事で食後高血糖が発生する』問題について正面から回答する文章を治療ガイドに明記しない限り,全国の医師は患者に不自然な説明をするか,あるいは 『医師を信用しないのか!』と怒鳴りつける以外 てだてがないでしょう.
猛暑も一段落しそうなので,再び 実家に行ってきます.ブログはしばらく休載します. 今回はお役所と銀行などを回って手続きを行う予定です.
コメント
炭水化物60%と言うのは健康な日本人の平均的な食事内容だと思うのですが、なぜ糖尿病患者に普通の食事をさせようと言う想いに至ったのかさっぱりわかりません。糖尿病なのだから食事療法で治療するなら治療食が必要なはずです。カロリーを減らして栄養失調になるのがオチです。
どう考えても糖尿病と言う生活習慣病は患者が暴飲暴食した結果であると言う偏見が医師の側にあるとしか思えません。
他の生活習慣病も同じですが、直らないのは患者が生活態度を改めないからだと言う決めつけと偏見が医師の側にある内は大した治療効果は得られないでしょうね。製薬会社の思うツボです。
>なぜ糖尿病患者に普通の食事をさせようと言う想いに至ったのかさっぱりわかりません
「炭水化物比率60%の米を主食とする素朴な和食」が日本人全員の理想的な健康食であるから,という立場だからです.
さらに健康日本21に関する厚労省検討会でのこの資料によれば;
糖尿病の発症予防と重症化予防の観点から日本人の食事を考える[PDF]
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000015823.pdf
和食は糖尿病の発症を予防し,重症化も防ぐと力説しています.
つまりこの人達にとっては,炭水化物60%が糖尿病に有効かどうかではなくて,既に結論は出ているというスタンスなのです. もちろん No Evidenceです.ただ相関関係だけを述べているだけです.
食後血糖値が300まで上がったって、大きな健康上の問題はないのです。
糖質摂取量を制限すれば、その分、たんぱく質や脂質の摂取量を増やさないといけません。
たんぱく質の摂取量増加は腎機能に悪影響がありますし、脂質の摂取量増加は心血管疾患リスクを上げるのです。
これは決まっているのです。
糖尿病患者は、それでなくても腎障害や心血管リスクが高いのです。
それらのリスクを下げるためには、たんぱく質や脂質の摂取量は適切な量に保たれなければなりません。
そうすると、必然的に糖質の摂取量が決まります。
糖質摂取量は減らしてはいけません。
糖質は悪くないのです。悪いのは、たんぱく質と脂質です。
糖質で血糖値が上がったとしても、たんぱく質や脂質の摂取量が適切であれば、すぐに下がるはずです。
血糖値が上がって下がらないのは、たんぱく質や脂質の摂取量が多いからです。
血糖コントロールが悪いなら、まずはたんぱく質と脂質の摂取量を見直しましょう。
…と、力説してみましたw
さすがは長年 病態と栄養との関係を研究されてきた専門家は違いますね.
特に 食後高血糖はそれだけで糖尿病性大血管障害の独立したリスクである,という巷の噂を 軽やかにスルーしているのが 素晴らしく鮮烈です.
更に 糖尿病でも健常人と全く同じ食事でいいという大発見には感動しました(理由は理解できませんでしたが).
やはり エビデンスよりは信念が大事なのですね
...と,感心してみましたw
highbloodglucoseさんのコメント通りのことを今日、医者と管理栄養士に力説されました笑
タンパク質の発がん性と私を信用してくれという詐欺師のような言動が加わっていましたが、概ね同じだったので思わず筆を取ってしまいました
脂質といってもいろいろあるのに,また蛋白質も多種あるのに,ひたすら P/F/C比だけを問題にする. こんな医師がまだいるのかとも思う反面,まだまだこういう人達が多数を占めているのでしょうね.