メトホルミンとの「相性」[1]

糖尿病治療に劇的な変化をもたらしたインスリンが登場してからほぼ100年. 最初は抗菌剤(サルファ剤)として使用されていたスルホニルウレア剤の登場から80年,そしてメトホルミンはそれに次ぐ60年以上の歴史があります.

この長い歴史から,どの薬剤も作用も副作用もよく知られており...と言いたいところですが,メトホルミンだけは,今でも わかっていることよりも分かっていないことの方が多い不思議な薬です.

メトホルミンとの「相性」

副作用は結構多い

メトホルミンは,「低血糖も起こさず,長期間服用しても体重が増加しない,副作用といえば ごくまれに発症する乳酸アシドーシスのみ 」 と書かれることもありますが,それは正しくありません. 正確には命にかかわるような副作用は乳酸アシドーシスだけである,というだけです.

実際にはメトホルミンを服用した人には 程度を問わなければ約30~40%ほどは 何らかの副作用,特に胃腸症状(下痢,食欲不振,腹痛,嘔吐,腹部膨満,胃炎,便秘,放屁増など)が発生します. これはアカルボースで90%以上に初期腹部症状が現れるのに次ぐ発生率の高さです.

まるで効かない人も

また,多くの症例では血糖降下を達成できますが(*),少数ながらメトホルミンの効果がまったく見られない人もいます.

(*)『メトホルミンによる血糖降下は弱い』と思っている医者も多いですが,平均的には最新のDPP-4阻害剤よりもはるかに効果は強いのです.

このシリーズでは,前回シリーズで取り上げた『メトホルミンは腸に高濃度で蓄積する』ことが,この「相性」と関係しているのではないかと考察してみたいと思います.

見切り発車です

実はこの考察は,来月大津市で開催予定の 第63回 日本糖尿病学会年次学術集会(5/21~23)の,

シンポジウム14【古くて新しい薬「メトホルミン」~基礎研究から見えてきた多面的作用~】を聴いてからにしようと考えていたのですが,どうもこの通り 開催自体 も怪しくなってきたので,見切り発車いたします.

[2]に続く

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