貧血か血流障害か

[カバーイラスト (C) はまこちゃん さん]

前回の記事で:

糖尿病足病変は,とりもなおさず 神経障害 及び 血流障害なのです

と書きました.
足が腐り落ちて切断するしかなくなるのは,足の,特に末端の足先から足の付け根に向かって次第に神経が『消えてなくなる』のが原因です.

では,足の神経障害と血流障害では,どちらが先なのでしょうか?
それは 血流障害が先です.
この図の通り,神経細胞は非常に細いものです. 特に脊髄から遠くなるにつれて 次第に枝分かれして,脊髄から最も遠いつま先では 神経の太さはわずか数ミクロンしかありません.

したがってその細い神経に酸素・栄養分を届ける末梢血管は もっと細い繊細なものです.

ところが糖尿病を放置していると,高血糖のために まず血管の内皮細胞が崩壊し,血液を送れなくなります(=血流閉塞障害). したがって神経も細い方から,つまり末梢から 順に死滅していきます.

だから血流障害がまず発生し,その結果として神経障害が起こるという順番です.

血流障害と貧血

なお,血流障害と貧血とは異なります.

貧血とは,人体全体の血液の総量が少ない,または血液量は多いのだが,血液の中のヘモグロビンが少なくて,つまり血液の濃度が薄くて,十分な酸素運搬能力がないという状態です.

これに対して血流障害とは,血管が閉塞したり,あるいは血管そのものが消失したりして,それより先に血液を送れない状態です.

この二つのどちらかなのを見分ける方法は簡単です. 貧血であれば,歯茎の色,あるいは アカンベエをした時の下瞼の色が白っぽいのですぐにわかります.

(C) 佐野内科ハートクリニック

歯茎や下瞼の色が血液で十分赤いのであれば,それは貧血ではありません.

血流障害でまず起こること

では,高血糖により血流障害が起こると,まず何が自覚できるのでしょうか?
それは『痛み』です.

『ピリピリ』『ジーン』『ズキズキ』『針で刺されたような』と,人により表現の仕方はいろいろですが,神経が栄養不足で悲鳴を上げているのです.膝を曲げると痛いが,膝を伸ばしてしばらくすると痛みを感じなくなるというのも血流障害が発生している証拠です. 膝を曲げて その付近の血管が圧迫されると,そこから先の末梢側への血流が細るので,限界に達していた神経が痛みを訴えます.

しかし,痛みが感じられるうちは まだ幸いです. 上図の通り,末梢神経が血液不足で死んでしまうと,もはや痛みすら感じなくなります. こうなると,足先にほんのわずかな擦り傷ができただけで,神経は感知できずに組織は腐敗して壊死していきます.確実に足の切断に一歩近づいたのです.

コメント