個別化食事療法の具体的な指針は?
2019年10月に日本糖尿病学会が発行した『糖尿病診療ガイドライン 2019』(以下 GL-2019)では,
糖尿病患者の食事療法は これまでのように一律・機械的にすべての患者にまったく同じ食事療法(=食品交換表)を適用するのではなく,患者個別ごとに病態・年齢などを勘案して個別化すべきだ
という方針が明記されました. しかし,では具体的にどう『個別化』するのか,その具体例は書かれていません. これでは実際に患者に栄養指導する立場の医師・管理栄養士は困るでしょう.
実際,そう感じたのは私だけでなくて,3月に開催された日本糖尿病学会が主催する糖尿病専門医向けの講演会『第55回 糖尿病学の進歩』では,『GL-2019だけでは抽象的すぎて具体性がない』という声が出ました.
それに対して学会幹部は
日本糖尿病学会がその後発表した『コンセンサスステートメント』で補足しているので,そちらを見てほしい
と回答していました.その『コンセンサスステートメント』が,これです.学会発行誌の『糖尿病』の記事ですが,現在はオープンアクセスですので,誰でも全文が読めます.
読んでみました
いやもう,いったい いつまでやる気なのでしょうか.『コンセンサス ステートメント』つまり,『合意文書』という名前ですが,全然『合意』に達していないのですよ,延々と賛否両論を並べているだけ.
さすがに このステートメントの内容を紹介する気は起こりません.それでもぜひと言う方は,ここからダウンロードして読んでください.ただし,時間の無駄遣いになる可能性大と申し上げておきます.一応 この文書の要約は試みたのですが,延々と続く両論併記なので,断念しました.
学会に対して不遜な言い方ですが,文字数が多いだけで 何も書いていないのと同じ,いや正確には『糖尿病の食事療法個別化につき,日本糖尿病学会が現時点で断定できることは何もない』と38文字で要約できる内容です.『コンセンンサス・ステートメント』とは,つまりは『意見の一致をみないことで合意した』という意味なのでしょう.
唯一,GL-2019より踏み込んだと言える箇所は;
以上の検討から,対象患者を選べば,130~150 g/日の軽度糖質制限食は短期の血糖改善や体重減少に有用であるが,長期効果や長期の安全性に関しては明確ではないため,適した患者を選んで,インフォームドコンセントを得たうえで治療を開始することが必要と考えられる.
コンセンサス ステートメント p.95
一応 北里大学病院/山田悟先生の提唱する『緩やかな糖質制限食(ロカボ)』を『軽度糖質制限食』と呼びかえて 『短期ならありえるが,長期的安全性は不明である』,つまり 『糖質制限食を食事療法の通常の選択肢の一つとすることだけは絶対に認めない』これだけはきっぱりと明白です.
学会はまだまだ やる気です.迷走は延長戦に突入しました.
[3]に続く
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