感想[1]は ブログ別館に掲載しております.
今回の学会では,シンポジウムは全部で30本行われますが,食事療法に関係するものは この1本のみです.
タイトルの通り,昨年9月末に発表された 『糖尿病診療ガイドライン 2019』で示された 新しい食事療法の概念についての総合解説です.
最初の講演で 滋賀医科大の森野先生は,上記ガイドラインの第3章『食事療法』で示された 糖尿病食事療法のカロリー設定は,実測値をベースとしたものであること,また日本を含むアジア・世界のデータから,総死亡率がもっとも低いBMIは22とは限らず,22~25と幅があること,しかも年齢が上がるにつれて むしろBMI=25付近がもっとも死亡率が低くなることから,
- 従来の一律にBMI=22を『標準体重』とするのではなく,BMI=22~25を『目標体重』とする
- 消費エネルギー実測値を基に見直すと,成人の通常の日常活動は 30kcal/kg以上であり,従来ほとんどの人に 20~25kcal/kgの「軽労作」を当てはめていたのは過少であった.
- 高齢者は蛋白質吸収効率が低下するので,高齢者は蛋白質を積極的に摂取すべき
とのことでした.以上は この記事にも詳しく書きましたが,ほぼその内容と同じです.
2番目の 日本女子大 丸山先生は,主として日本人の栄養摂取状況 特に栄養素摂取比率を解説されました.その講演の中で;
糖尿病の食事療法では,血糖処理能力に応じた糖質摂取量を決める
と述べられたのが印象的でした. 私はこの記事にも書いた通り,
「まず自分の耐糖能を正確に把握して ,その限界を越える糖質は控える方が安全だ」
と考えていますが,それとまったく同じ内容を糖尿病学会で聞いたことに驚きました.
というのも,かつて日本糖尿病学会では,
この方法(=カーボカウント)の一種の悪用によって極端な低糖質食に走ることのない様に留意すべきと考えられる.
第56回日本糖尿病学会 シンポジウム 6-1(2013年)
などという意見が支配的だったからです. つまり『カーボカウントは糖質制限につながるから望ましくない』とまで言われたのに,その正反対の『カーボカウントが糖尿病食事療法の基本だ』という意見が 今や 堂々と出されるようになったのです. もちろん これは学会シンポジウムでの一講演者の意見であり,学会の決定事項だとは言えませんが,糖尿病食事療法における学会のスタンスがかつてとは様変わりしたことを示す象徴的な発言でした. これだけでも 福沢諭吉先生にお出ましいただいた値打ちはありました.
学会の感想記事は,本館・別館に交互に記載しています.
次回 感想[3]は 別館ブログにあげる予定です.
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