糖質制限は行ってはならない
これまで見てきた通り,食品交換表の歴史では,日本糖尿病学会は『食品交換表に基づくカロリー制限食こそが,唯一正しい糖尿病の食事療法である』という立場を堅持してきました.
したがって,食品交換表を逸脱する方法,とりわけ食品交換表を真っ向から否定することになる『糖質制限食』や『低炭水化物食』には 激しい非難を浴びせてきました.
きっかけ
ところが 2015年の日本病態栄養学会で,『ユネスコが和食を理想的健康食として推奨したというのは間違いである』ことを,これでもかと言うほど徹底して指摘する企画が行われました.
このことだけを見れば,しごく当然のことです. しかし なぜ この企画が学会の正式の行事として,しかも学会 冒頭という『目立つ形』で行われたのかを考えると興味深い出来事でした.というのもこれ以降の日本糖尿病学会,日本病態栄養学会の動きを見ると;
『食事療法のエビデンスを求めて』とか『カロリー制限食か糖質制限食か』などと,形式的には2013年の日本糖尿病学会の提言ですでに決着していたはずのテーマをとりあげることがむしろ増えたからです.
これらを討論会のテーマとして取り上げることを求める声が強くなり,『既に決着済だ』として拒否することがもはやできなくなったと推察されます.つまり;
攻守が逆転した
そうです.攻守が入れ替わったのです.
そのことを象徴する討論会がありました. 2017年の第60回 日本糖尿病学会のディベートです.
これまで 何度も行われてきた食事療法の『早慶戦』,京都府立医大の福井先生(=炭水化物60%のカロリー制限食を推奨)と 北里大学の山田先生(=糖質制限食を推奨)とのディベート対決です.しかし,ここでは両者の丁々発止のやりとりよりも,山田先生の講演件名(赤枠)に注目してください.
立場の逆転
従来カロリー制限食派は 『糖質制限食は~のおそれがある』などと攻撃一方でしたが,今や『カロリー制限食は~の危険性がある』と,そちらこそ守勢に追いやられたのだという宣言です.
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コメント
昨日、highbloodglucoseさんのブログにコメントしていて気づいたことがあります。
https://ameblo.jp/highbloodglucosediary/entry-12616525577.html
入院時に食前血糖値を測っている事。これは、糖尿病治療のための入院時も同じである事。
そして、よく考えるとSMBGのチップは保険適用の上限が120枚であり、食前と就寝前の測定分の枚数しか与えられない事。
要するに食後血糖値なんて医師は診てないのです。血糖値を点でしかとらえていないのです。
リブレが出始めたころ、雑誌等の医師向けの記事で「連続測定したデータの見方、活用方法」的な記事を時々目にしました。
最初からリブレを使っている私にしたら、データの見方って「そのまんまじゃないの?」と思ってたんですけど、医師は血液検査なりSMBGなりの点でしかとらえていなかったんだろうと言う事に今さら気づきました。
点と点を結ぶ線ではないのです。頭では分かっていてもやはり連続したものと言う意識は薄いのでしょう。
朝、これくらいだったらOKとか、食前にこれくらいだったらOKとか、そう言う見方しかしてこなかったんだろうなぁと思います。
だから、炭水化物60%の食事がバランスが良い食事などと平気で言えるのでしょう。食後の事なんか頭にないのですから。
highbloodglucoseさんは、1200kcalの病院食で自主的に測った食後血糖値が300近くまで上がって看護師に見せたら目を丸くされたようです。
自主的に測ってなかったら(普通の患者は計らないでしょう)そりゃ大変な事になるでしょうね。
糖尿病学会での教育講演,これは専門医ではない一般内科医を対象にした情報提供ですが,その資料などを見ても,学会は 長年にわたり 食後高血糖を軽視又は無視してきました.
一般内科医向けの『糖尿病治療ガイド』を見ても,『食後高血糖』という言葉が登場したのはつい最近のことです.
学会が公式に発行している『治療ガイド』に記載されていないのですから,普通の医者であれば,仮に患者の食後血糖値のデータを目の当たりにしたとしても,『なにそれ?』『それがどうかしたの?』という意識だったのでしょう. 最近では血糖値スパイクがテレビでも報道されたので,さすがに意識はしているでしょうが.
なお,カロリー制限食 絶対主義の人からみると;
食後高血糖に言及すれば 食事の糖質と食後の血糖値との関係にふれざるを得ず,したがって『あなたは糖尿病です.血糖値の高い病気です. 炭水化物60%の病院食は血糖値を爆上げします. でも病院食は完食してください』と 誰がみても矛盾していることを認めざるをえませんから.なおさらふれたくないのでしょう.