新型コロナウイルスによる死亡率(=人口百万人あたりの死者数)は,本来は結核予防のためである BCGワクチンを国民全員に接種している国,又は かつてそうしていた国では低いのではないかという『BCG説』の情報を集めてきました.
最新の情報(2020年4月24日 13:00)では,このようになっています.
過去から現在まで国民にBCG接種を義務づけている国(●)や,現在はやめていても過去に接種を義務化していた国(●)は,現時点ではたしかに死亡率が低いです. しかも義務化期間が長い国ほど死亡率が下がる傾向もみられます.
ドイツの例
ただし,上の図で ドイツと英国だけは 全体傾向からとび離れているようにみえます.
しかし,これは「現在の」ドイツ全体を集計するからこうなるにすぎません.
ドイツの感染状況を公表しているロベルト・コッホ研究所(ドイツ連邦保健省所管)のHPを見ると,ドイツ各州(Bundesland)における死者はこの通りです(集計日時が違うので,死者数は上の表とは一致しません).
ドイツでは,医療崩壊を防ぐために,重症者をベッドの余裕があるところに移送する対策を行っているので,すべてがこの分布通りとは限りませんが,しかしこの数字を地図に表示してみると;
かなり明瞭に 旧東ドイツであった州の死亡率は,旧西ドイツの州よりも低いのです(なお 西ベルリンは旧西ドイツ).
実は 1990年のドイツ統一までは,東ドイツでは1951年から全国民にBCG接種していました(西ドイツは1961年から). しかも旧東ドイツではBCGワクチンは当時のソ連株であり,西ドイツではコペンハーゲン株と異なっていました. 統一後は,全国が西ドイツ方式になりましたが,それも1998年で全国民への義務接種を打ち切っています.
つまり旧東ドイツは48年の摂取履歴(そのほとんどがソ連株),旧西ドイツは38年の履歴(すべてコパンハーゲン株)と大きく異なるのです.なお旧東ドイツの医療体制についての情報は年々失われつつありますが,この文献に詳しく解説されています.
したがって,ドイツを旧東西で分けて表示するとこうなります.
英国はなぜ高い?
こうしてみると,やはり英国はBCGだけでは説明のつかない位置にあることがわかります.
英国独自の国民保険サービス(*)が裏目に出たからではないかともいわれています.
(*)National Health Service(NHS): 原則として患者はまず自分に指定された診療所で診断を受けなければならない. 治療の必要ありと診断されれば,はじめて病院にかかることができる. 2000年以降,NHSの予算削減が続いており,これが入院・治療体制のひっ迫をもたらして,新型コロナウイルスの死者を増やしたのではないかとも言われている.
今後の検証に期待
今回のコロナウイルスが収束した後,徹底的な解明が望まれます. しかし,今のWHOにそれが期待できるでしょうか?
【新型コロナウイルス:BCG説 完】
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