第23回日本病態栄養学会年次学術集会が 年明け早々に,京都国際会館で開催されます.
プログラムも公開されました(ただし 簡易Ver.の[速報版]です)
今回の目玉はなんと言っても
2日目(1/25)午後に行われる6学会 合同パネルディスカッション
『糖尿病診療ガイドライン 2019 -総エネルギー摂取量の設定-を考える』
でしょう.
この6学会の代表が,『糖尿病診療ガイドライン 2019』に記載された通り,
- 従来のBMI=22と労作度設定による推奨カロリーは,実際の消費エネルギーに比べて過少であった.
- 今後は 摂取カロリーの一律設定はしない
などの方針転換に賛意を表明する場であろうと予測されます.
ここに出席する学会の専門領域では,糖尿病と同様に食事療法の重要性は高いです.ところが 今までは,各学会が個別に食事療法を推奨しておらず,ただ[糖尿病学会の食品交換表に準拠する]と,いわばタダ乗りで済ませてきたのです.したがって,糖尿病学会が食品交換表を改訂するのであれば,それに従う以外の選択肢はありません.
『肥満 は 害悪』『低カロリー は ヘルシー』
これまでの 新聞・テレビによる,この標語の刷り込み効果は絶大でした.たしかに 中年以下の世代に関してはこれは正しかったでしょう. ところが実際には これを一番守らなければいけない中年・若者が聞き流し,忠実に実行してきたのは 高齢者だったのです.
『痩せれば痩せるほど健康』『粗食が健康』と信じ込んでいる高齢者は今でも多数派です.ところが 近年 日本だけでなくどの国の調査でも,長寿高齢者のBMIはやや『太目』,つまりBMI=22-25くらいがベストなのです.
サルコペニアの犯人ではないか
サルコペニアとは,極端に筋肉量が少ない状態です.極端な粗食,特に蛋白質量の摂取不足から生じます.
日本糖尿病学会の食事療法の根幹は食品交換表に示すカロリー制限食です.ところがそこで推奨されている設定カロリーが,真の消費カロリーに比べて 著しく過少であったことが最近判明しました. ということは;
【日本の高齢者のサルコペニアを作り出してきたのは,実は 食品交換表が原因ではないのか】
と厚労省からにらまれたのではないかと推測しています. 実際,厚労省は 『日本人の食事摂取基準 2015年版 』 に続いて,来年発行の2020年版でも二重標識水法による『実測すると本当の消費カロリーはこうなのだ.これに合わせろ!』を前面に打ち出しており,もはや各学会も,聞こえていないふりもできなくなったのでしょう.
なお 出席学会の顔ぶれを見ると,同じく食事療法の比重が大きいはずの 日本循環器学会,日本高血圧学会の名前がないのがやや奇異な印象です. まだ学会としてのスタンスが定まらないのかも.
一大進歩
今年の仙台の日本糖尿病学会で採用された,2つのツール;
- シンポジウム・講演会場で,聴衆がその場で打ち込んだコメントを,ニコニコ動画風にリアルタイム表示するシステム
- 従来の 紙のポスターではなく,会期中であればいつでもWEB経由で,パワポ原稿を閲覧できるデジタルポスター方式
は非常に好評でした. 前者は,たぶん京都国際会議場でも既にインフラはあるはずですから,今回も採用される可能性大. また後者のデジタルポスター方式も既に準備が始まっています.
紙の時代のポスター発表では,面白そうなものがあっても, 掲示時間が限られていたり,掲示会場がとんでもなく離れた場所だったりで,口演やシンポジウムと重なると閲覧すらできませんでした. それがいつでもPCから閲覧できるとなると大いにありがたいです. 発表者にとっても,この方が張り合いがあると思います.ポスターだけにw
追って抄録集も
学会で発表されるすべての報告のDigestを掲載した抄録集もいずれUploadされるはずなので,ご注目を
ただ 前回学会の抄録集では,シンポジウムなどの予定原稿が一切掲載されなくなりました[タイトルのみ記載].これでは,開催時間が重なっている複数のシンポジウム・講演で,どちらを選ぼうかという際に,抄録集を見ても内容が判断できないため 会員にはひどく不評でした.今回はどうなるのか不明です.あれだけはやめてほしい.
京都で この学会に参加すると,3回に1回くらいの確率で雪に降られます. 『ひょっとしたら新幹線が止まって東京に帰れなくなるかもしれない』とあわてて 最終日の午前で切り上げた年もありました. 今年も 京都の北山は100%イケズの寒さだと予報しておきます.
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