【速報】糖尿病診療ガイドライン2019

10月17日の発売日がせまっており,ようやく表紙が公表されました.

ただ,現時点で予約を受け付けているのは,Amazon,楽天ブックスなど,ごく一部のサイトのみです.

昔の名前で出ていません

(C) 日本クラウン(株)

このガイドラインは2004年の初版発行以来 3年ごとに改訂されており,

  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(2004)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版(2007)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2010(2010)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013(2013)
  • 糖尿病診療ガイドライン 2016(2016)

2013年版までは,

【科学的根拠に基づく】糖尿病診療ガイドライン

だったのですが,前回の2016年版から誌名が

『糖尿病診療ガイドライン』

となり,『科学的根拠』をはずしてしまいました.その理由は説明されていません.そしてそれは今回の2019年版でもそうです.

科学的でなくなった?

もともと このガイドラインは 初版序文にもこう書かれていたように,

本ガイドラインはこのような視点に立ち,それぞれの問題に対する医学的evidenceを利用しやすいかたちで提供し,専門医の立場からそれらに評価を与え,診療上の推奨を行うことを目的に作成された.

科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(2004) 序文

『科学的根拠に基づく』,つまりEvidence Based Medicine(EBM)を謳うものでした. 医師のヤマ勘や経験のみに頼るのではなく,厳密な臨床試験から得られた結果を根拠に診療を行うべき,との考えからです.
『Aの治療法ではなく,Bの治療法を行うのは,これこれの臨床試験で,こういう結果が出ているからだ』と根拠を示せる治療を行おうというものです.よって EBMは 別名『ヤブ医者撲滅システム』とも言われます.たしかに経験ゼロの新米医師でも,EBMにさえしたがっていれば,とんでもない間違いをおかす危険は避けられます.

ところが,前回の2016年版の食事療法では,糖尿病患者の「適正な」摂取カロリーについては,厚労省の[日本人の食事摂取基準2015]という文献があるにもかかわらず,その記載は無視して,全く違う設定カロリーを「カロリー制限食の推奨カロリー」としていたのです.

うがった見方ですが,これでは『科学的根拠に基づく』とは言えなくなったのでしょう.

今回のガイドライン改訂では,学会自身が『これまでの推奨カロリーは 過少であった』と公式に認めているのですから,そこは改訂するのでしょう. ただ最大の問題は,カロリー制限食という基本構図をどうするのか,さらに2016年版で「炭水化物60%は絶対に正しい」,としていた立場をどうするのかが注目されます.

しかし,ここに手をつけると,食品交換表の存在意義がなくなるので,糖尿病学会内部,および これまで食事療法を糖尿病学会に丸投げしてきた他の関連学会からの猛反対があったものと推測されます.

興味はあるのですが,果たして4400円出すほどの内容なのか,予約を迷っております.

コメント

  1. 西村典彦 より:

    私は、既にAmazonで予約しました。果たして値段だけの価値は?

    今回注目は
    (1)カロリーが増える
    (2)PFC比率60%のままでは摂取糖質量がこれまで以上に増えてしまう。
    (3)まさか(2)はないと思うので糖質摂取量をこれまでと同じにすればPFC比率は45%程度になる
    なのですが、では残りの65%をどう割り振るか。タンパク質はもっと必要と今更、誰かさんが言ってた事を考えるとタンパク質20→30%、残りが脂質(25%)と言うところかと予想していますが、変更するならするで、どう説明されるのか興味津々です。
    計算間違ってたらごめんなさい。
    みなさん、予想してみませんか?

    • しらねのぞるば より:

      なにしろ『診療ガイドライン2016年版』では,食事療法を解説したほぼ全ページにわたって,『炭水化物60%は絶対である』と強調していたので,果たしてそこまで踏み切れるかなと危ぶんでいます.
      そもそも栄養摂取を(蛋白質の xxg/kgのように)体重あたりの絶対量で規定するのならともかく,なぜあんなに P/F/Cの相対比率だけにこだわるのかがまったく理解できませんが.

      とはいえ,2016年版の統括委員・策定委員が43名,原案を精査する評価委員が50名強でした. 中には,統括委員と評価委員を兼務している人もいました. つまり,検事と裁判官が同一なわけです. もしも2019年版が2016年版からガラリと変わるとなれば,この93名の方々のメンツは丸つぶれでしょう.患者の健康と学会幹部のメンツ,どちらが大事かといえば,それはもう…

      最悪の場合,

      (1)カロリーは,肥満者の現実的な減量をめざして適宜設定.
      (2)炭水化物は食品交換表の範囲(=50~60%)
      (3)総カロリーを増やし,かつ炭水化物50~60%を守ると.炭水化物の摂取絶対量は増えるが,そこは 食べ順,低GI,ゆっくり食べるetcの方法でなんとかしろ.

      とお茶を濁すのではないかと.
      ますます予約する気が失せますね,こりゃ.

  2. ドヴ山 より:
    • しらねのぞるば より:

      おおお!!
      ありがとうございます. これ全部ダウンロードしてみましたが,ほとんど全文じゃないですか.
      糖尿病学会もやりますね.