なぜ そう言われていたのでしょうか
HbA1cが同じでも
書物やネットでは まるで確定した事実であるかのように扱われている;
HbA1cは過去2か月の平均血糖値を反映する
というのは,何を根拠にしていたのでしょうか?
- 一つの赤血球の寿命は120日くらいである.
- ある時点で赤血球の分布を見ると,今日できたばかりの赤血球もあれば,120日経って 老化した赤血球もある. よってそれらの平均を取れば60日くらいである.
- 赤血球が古いほど,それだけ糖化している割合も高くなる.
- したがって,糖化されたヘモグロビン(HbA1c)の割合を見れば,過去1~2か月の平均血糖値がわかる
ここでも,またもや すべてを【平均値】で考えていることがわかります. 『人類なら,一人残らず赤血球の寿命は,120日ピッタリである』ではありません. 120日より長い人も短い人もの人もいるはずです.実際,正常人や糖尿病患者で,個人別に赤血球の平均寿命を実測してみたところ;
驚くなかれ,赤血球の平均寿命は 38.4~59.5日と,人によって2倍近い差があったのです.
ということは,個々の赤血球の寿命は,その2倍の76~120日,個人によってこれだけ大きく違うのです.
赤血球の寿命が短い人はHbA1cは『良く(低く)』出るし,長い人は それだけ古い赤血球が多いのでHbA1cは『悪く(高く)』出ます.しかも個人間の差だけでなく,同一人であっても,激しい運動や労働で全身の新陳代謝が高まれば,古い赤血球はどんどん脾臓で廃棄され,赤血球の平均寿命も短くなります.あるいは,病気や自己免疫により赤血球の溶血破壊が進行すれば,健康ではないのに,見かけ上HbA1cは非常に良くなります.
つまり,一律に赤血球の寿命を120日(したがって平均寿命=60日)という前提でのみ「過去2か月ほどの平均血糖値の反映」となるにすぎません.その前提が成り立たないのであれば(実際 成り立ちません),HbA1c=過去2か月の平均血糖値 は危険な断定です.前回の記事 で,HbA1cが同じ値なのに,CGMで測定した『本当の平均血糖値』が,人によって大きくバラついていたのも当然で,その方が正しいでしょう.
[4]に続く
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