ご当地 糖尿病治療事情【4】

前回までは,主として糖尿病の内服薬の集計結果でしたが,今回は注射薬,つまり インスリンとGLP-1作動薬の話です.糖尿病の医療費を解説しているWEBは多いのですが,内服薬と注射薬とを区別しているところは少ないので調べてみました.

注射薬を都道府県別に集計してみると

インスリンには,持効性,速効性,超速効性,ミックスなどの種別があり,また1キットのインスリン単位も100単位/300単位などとあり,各社合わせて50品種ほどありました.一方 GLP-1作動薬はほぼバイエッタ,ビクトーザがすべてです.

各都道府県の糖尿病患者一人あたりの年間金額はこの通りです.

1型糖尿病患者は全員インスリンを使いますが,2型は全員とは限りません.したがって,インスリン注射を処方されている患者人数あたりで計算したかったのですが,そういう統計データは見当たらないので,やむを得ず全患者数で割りました.

高齢化率との相関性を見ると

内服薬と同様に,横軸に高齢化率,縦軸に注射薬金額をとってプロットするとこうなります.

このシリーズの第1回の記事 で見た投薬量と高齢化率との関係[再掲]と見比べると;

東京・千葉・神奈川の首都圏3県は,内服薬でも注射薬でも,高齢化率が低い割には投薬量が多いことがわかりました.しかし,内服薬では一番投薬数の多かった高知県は,高齢化率が高い割には,注射薬は低い方になりました.

注射薬の主体はインスリンであり,インスリンのユーザーは圧倒的に1型なので,実はほとんど地域差は出ないだろう(=地域によって1型発症率に差はないはずだから)と思っていたのですが,これもまた意外な結果でした.

この地域差の問題は,当初予想していたほど単純なものではなく,いろいろな要素がからんでいそうです.

コメント

  1. 匿名 より:

    高齢者は、インスリン注射の薬剤管理、作業内容、血糖値測定、注射部位などの理解力不足や、そもそも理解できない認知様症状を併せ持ったりする事が多い(と思われる)ため、医療事故防止の観点からドクターが処方を躊躇う…、インスリン注射のリスクの説明時に本人または家族の拒否などがある…、あるいは飲み薬から注射への変更拒否(病状悪化したとは思えないor認めたくない等)…とか、ではないでしょうか?

    長時間持続性のインスリン(インスリン基礎分泌を補うタイプ)は、ある程度使われているかも…

    • しらねのぞるば より:

      たしかにそうかもしれません.
      学会で聞いた話ですが,過疎・高齢化が進行した地方では,介護・支援が必要な高齢者の人数に比べて,サポートする人材が圧倒的に不足しており,複雑なサービスはできなくなってきているとのことです.