1型糖尿病でも
米国カリフォルニア州に住む,各人種の未成年について 1型糖尿病の発症率を調べた報告があります.
Racial differences in incidence of juvenile-onset Type I diabetes: epidemiologic studies in southern California
Diabetologia (1985) 28: 734- 738
それによれば,人種によって発症率が一桁も違うことがわかりました.
米国の生活習慣・食生活では,という条件付きですが,圧倒的に白人の子供の発症率が高く,アジア系では低いのです.
しかも 発症率だけでなく
病態もまた違うと報告されています.日系米国人 Wilfred Y. Fujimoto教授のレビュー論文です.なお,この論文の著者 Fujimoto 教授は数年前の糖尿病学会でも公演されましたが,今月の仙台の学会にも再び来日して講演を行う予定です.
Pathophysiologic Differences Among Asians, Native Hawaiians, and Other Pacific Islanders and Treatment Implications
DIABETES CARE, VOLUME 35,2012 1189-1198
それによれば,『アジア系人種の1型糖尿病患者のクランプ試験では,健常者と変わらないインスリン感受性を示したことから,アジア系の2型糖尿病患者は同じBMIの1型糖尿病冠者に比べてインスリン感受性が低下していることが示唆される』 としています. インスリン抵抗性説では説明できないよというわけです.
なぜこれほど違うのか
1型でも2型でも,日本人とコーカソイド(いわゆる白人)とでは糖尿病が全然違うことは明らかです. こうなると,Ahlqvist博士が『北欧白人の2型糖尿病と言われるものは,実は複数の異なる病気である』とするならば,日本人と白人の糖尿病ともやはり似て非なるものだと予想しても的外れではないでしょう. とすれば,その差の原因は,ライフスタイルや食生活だけではなく(なぜなら米国に在住しているアジア系米国人でも白人米国人とは異なるパターンを示す),やはり遺伝的素因に求めるしかないと思います.二言目には『食の欧米化が』という日本糖尿病学会はまた別の考えのようですが.
Fujimoto教授も上記レビューの中で;
A criticism of these algorithms — their failure to address fundamental pathophysiology — is especially relevant to a discussion of the treatment of diabetes in AANHPIs(注). The unique features of diabetes pathophysiology among subgroups within this very heterogeneous population may indicate a need for different treatment guidelines.
(注)AANHPIs = Asian Americans, Native Hawaiians, and Pacific Islanders
と,人種によってまったく糖尿病の病態生理が違うのだから,別の病気と考えて,それぞれの治療ガイドラインが必要だと訴えています. どうしても圧倒的多数派の白人中心の医療になってしまうことに もどかしさを感じているのでしょう. しかし,これは米国ではやむをえないことであって,むしろ欧米糖尿病医学の受け売りではなくて,日本人のデータに基づいた,日本人に適した治療法を確立できない日本の医学界の方に責任があると思います.この点に関してだけは『暴論』ではないと思います.
コメント
ぞるばさん
記事の中でコメントいただきありがとうございます。
また、何度もコメントしていただいたにもかかわらず失敗したとのこと、申し訳ありません。(ネットリテラシーが低く原因がわかりません)
暁現象ではなくて,起床後の交感神経亢進とのご指摘で、なるほどそうかも、と合点がいきました。ありがとうございます。
さきほど記事中のコメントを,ホリデー様ブログのコメントの方に転記しました(その方が何に対するコメントだったのか,後から読んでもわかるでしょうから).
まだ 空腹時血糖値があまり落ち着いていなかった頃に,健康診断のため 朝食を抜いた状態だと,ジリジリと血糖値が上昇していく現象は,たしかに経験したことがあります.データがみつかりましたので,この問題を記事にしてみます.