それなら 健康な人のインスリンは多いのでしょうか?
健康な人の空腹時インスリン値はどれくらいが正常値とされているのでしょうか? いろいろガイドラインなどを調べたのですが,『正常値』を定義したものはないようです. ただ病院の外注検査を受託する検査専門機関の解説にはこう記されています.
検査機関名 | 空腹時インスリン基準値(μU/ml) |
SRL | 1.84 – 12.2 |
BML | 2.24 – 12.4 |
FALCO | 2.7 – 10.4 |
検査機関によって微妙に値が違うことからみても,正常値というものは定義されていないことがわかります.
そこで 集めたデータを見ると
皆様のご協力を含め,私の集めたデータで,空腹時インスリン実測値がわかるものをまとめました.
たしかにほとんどの人は,上記の『基準値』に収まっています.ですが,この分布を見ると低い値に集中していることがわかります. また『基準値より低すぎる』という人が結構多いです.
では 健康で元気いっぱいの若者は?
大学運動部の男子学生5人に,33時間の絶食後に運動をさせるという,鬼監督のような実験が報告されています.
この論文は,運動による各血中ホルモン濃度の変化という点でも興味深いものですが,ここで試験に参加した若者たちの空腹時インスリン濃度を見ると,5~6μu/mlであり,やはり基準値範囲の低い方です.
日本人の本当のレベルは
このように見てくると,現在基準とされている 空腹時インスリン値は,日本人の標準と考えるには無理があるように思います.
その疑いは下の図を見ると,ますます深まります.
この方の空腹時インスリン濃度は,驚くなかれ 0.4μu/ml です.完全に『基準値』を下回っています. しかも,糖負荷試験でインスリン分泌が増加するのは90分後で 完全な『インスリン遅延分泌』です.ですから,ガイドラインに従えば,この人は「インスリン分泌不全」と診断されてしまうのですが,ご覧の通り 糖負荷試験での血糖値はまったく正常です.強靭な膵臓を持っているわけではありません.
私たち日本人が本来持っている体質とはこうなのではないでしょうか?
コメント
空腹時インスリンに関しては、海外のローカバー、ケトニアンなどは5μu/ml以下が正常と見ているようです。彼らからすればもともと少ない東アジア人を目指しているようなものですね。
>もともと少ない東アジア人
海外の文献を見ていると30とか40が平気に出てくるので,ピーク血糖値だと思って読んでいたら,これが空腹時だと途中で気付いて混乱したことがあります.