比較するには条件が違うのですが
前回の記事 にも書きましたが,この記事の「米国人の糖負荷試験結果」とは,現在の日本の病院で行われている糖負荷試験とは条件が異なります. 当時の米国では糖負荷試験の際に被験者が飲むブドウ糖の量は,その人の体重を基準として 1.75g/kg × 体重(kg) としていたのです.つまり 体重40kgの痩せた女性と,体重100kg超の巨漢とを同じブドウ糖量で試験するのはおかしいだろうという考えです. 本当はこの方が合理的なのですが.
又 以下のグラフで,糖尿病の程度がほぼ同じとみられるケースを並べていますが,これも厳密に条件をそろえたわけではありません.
更に 日本人のケースは せいぜい BMI=30までの人の個人です.一方 米国人のケースは BMI=30超の人の複数人の平均値です.
よってすべてについて,おおらかな比較であると思ってください.にもかかわらず,それを吹き飛ばすほど日米の差がこんなにも大きいので参考になります.
肥満でも耐糖能が正常
どの糖尿病の解説を見ても,『日本の糖尿病は,食の欧米化による肥満でインスリン抵抗性が発生し...』と書いてあります.しかし,それは嘘だとは言わないものの,そんな解釈では説明できない例がこの図です.
たしかに右の米国人の例では,大量のインスリン分泌により力ずくで血糖値を抑え込んでいる,つまりインスリン分泌がインスリン抵抗性に勝っている状態とは言えます.
しかし,左の日本人は[この人は投薬していません]わずかこれだけのインスリンでちゃんと血糖正常値を維持できているのです(インスリンの棒グラフがない部分は測定されていない時間帯です).したがって,日本人は肥満になっても,直ちに全員がインスリン感受性を失うというわけではない,という好例でしょう.
肥満で軽度の糖尿病
肥満者で.糖負荷試験2時間値が140~200の間にあるケースの日米比較です.ここで左の日本人は,ようやく明確なインスリン抵抗性を示しています.また,それと同時に遅延分泌も発生しています. 実際,この人は180分時に低血糖に陥っていますが,もしもインスリン分泌のピークがもう1時間早ければ,これほどの高血糖も低血糖も起こさなかったであろうと推測されます.
一方右の米国人は,ややインスリン分泌がインスリン抵抗性に負けている(=血糖値が正常範囲に保てない)とはいうものの,分泌遅延はまだ発生していません. またインスリン分泌総量は,日本人の何倍もあります.
肥満で明らかな糖尿病
空腹時血糖値が明らかに糖尿病型で,糖負荷試験でも300を越えてしまうケースです.
日米共に,インスリン分泌が衰えていることが明らかです. 右の米国人にも ついに遅延分泌が起こっていますが,ただそれでも日本人をはるかに上回るインスリンを分泌できるとは驚きです.
次回は,日米の『非肥満』の人を比較してみます.
[データ解析04] に続く
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