最近のイメグリミン

今回の第67回日本糖尿病学会では,会長特別企画の糖尿病とともに生活する人々の声をきく参加を最優先したため,シンポジウムや症例報告(口演,ポスター)は ほとんど参加できませんでした.

とはいえ,以前から注目しているイメグリミンには興味がありますので,主としてポスター発表と口演抄録から,最近の動向を調べてみました.

今回の学会で報告された イメグリミン(ツイミーグ)の症例は以下の46報です.

No.
Ⅰ-63-22型糖尿病患者におけるイメグリミンを1000mgより開始することの有効性と安全性の検討
Ⅰ-63-3データ駆動型クラスター分析により層別化された糖尿病患者サブグループにおけるイメグリミン単剤療法の有効性
Ⅰ-63-4DPP-4阻害薬で血糖コントロール不十分な2型糖尿病へのイメグリミン追加投与における血糖変動に対する有効性の検討
Ⅰ-63-5データ駆動型クラスター分析により層別化された糖尿病患者サブグループにおけるイメグリミンとインスリンの併用療法の有効性
Ⅰ-65-1イメグリミンの安全かつ効果的な投与方法について―ビグアナイド(BG)剤との併用使用経験の整理・検討―
Ⅰ-65-22型糖尿病におけるイメグリミンの安全性・忍容性・有効性の検討
Ⅰ-65-32型糖尿病患者におけるイメグリミンのランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス:感度分析の結果
Ⅰ-65-42型糖尿病患者におけるイメグリミンの有効性,安全性,忍容性:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス
Ⅰ-65-5リアルワールドにおけるイメグリミンの臨床的有用性の検討
Ⅰ-66-1CGMを用いたGLP-1受容体作動薬の併用有無による2型糖尿病に対するイメグリミンの短期的効果の検討
Ⅰ-66-2イメグリミンの有用性と肝機能,体組成,食行動への影響についての検討
Ⅰ-66-3臨床用量相当の血中濃度イメグリミンはマウス膵島のミトコンドリア機能を活性化しグルコース応答性インスリン分泌を促進させる
Ⅰ-66-4ミクログリアにおける高グルコース誘導性炎症に及ぼすオートファジー・ULK1を介したイメグリミンの新規抗炎症作用
Ⅰ-66-5イメグリミンの新規作用機序の同定
Ⅱ-74-5イメグリミンはヒトiPS細胞からの膵β細胞分化・成熟を促進する
Ⅱ-117-1当院2型糖尿病患者におけるイメグリミン使用例の背景と治療効果に関する検討
Ⅱ-117-22型糖尿病患者における6カ月間のイメグリミン療法の効果と併用の糖尿病治療薬の関係
Ⅱ-117-3イメグリミンによる治療効果の検討
Ⅱ-117-4実臨床下におけるイメグリミンの高血糖改善効果
Ⅱ-117-5NAFLD合併2型糖尿病患者においてイメグリミンが耐糖能や肝機能へ与える影響について(Fibroscanを用いた検討)
Ⅱ-118-1イメグリミン投与にともなう臨床パラメーターの変化の検討
Ⅱ-118-2低血糖の発現有無別での患者部分集団解析:イメグリミンとインスリンの併用療法試験の事後解析
Ⅱ-118-3イメグリミンの空腹時血中遊離脂肪酸濃度への影響に関する検討
Ⅱ-118-42型糖尿病患者に対するイメグリミンの各種代謝パラメーター変化および副作用に関する後方視的検討
Ⅱ-118-5当院におけるイメグリミンの有効性・安全性の検討
Ⅲ-126-5イメグリミンによるシュワン細胞のミトコンドリア機能改善メカニズム:NAD+量増加を介するサーチュイン遺伝子に対する影響
P-15-1当院におけるメトホルミンからの切り替えを含むイメグリミン導入症例の検討
P-15-22型糖尿病に対するイメグリミンの臨床効果の検討
P-15-3イメグリミン投与1年の経過を追えた2例の使用経験―GLP-1製剤併用の症例に関して―
P-15-4イメグリミン内服後に胃腸障害が出現する患者背景に関する検討
P-15-5イメグリミンとメトホルミン併用における下痢のリスク因子とは?:日本人2型糖尿病患者を対象とした第3相試験の事後解析
P-15-6イメグリミンとメトホルミン併用時の消化器症状有無別の部分集団解析:日本人2型糖尿病患者を対象とした第3相試験の事後解析
P-34-1当院2型糖尿病患者におけるイメグリミン追加投与の継続例と中止例の検証
P-34-2イメグリミン長期投与が2型糖尿病の病態に与える影響
P-34-3イメグリミン投与1年の経過を追えた1例の使用経験
P-34-4メトホルミン治療下の2型糖尿病患者へのイメグリミン追加投与はメトホルミン増量に比し血糖変動が改善する:前向き観察研究
P-34-5イメグリミンとメトホルミンの臨床効果に関する検討
P-34-6Imegliminの肥満を伴う日本人2型糖尿病患者と非肥満患者に及ぼす効果の違い
P-52-2イメグリミン単剤療法におけるBMI別の有効性および安全性:日本人2型糖尿病患者を対象とした臨床試験の事後解析
P-52-3骨格筋細胞におけるイメグリミンのグルコース取り込み作用の検討
P-52-4インスリン併用療法試験におけるBMI別の有効性,安全性:日本人2型糖尿病患者を対象としたイメグリミン第3相試験の事後解析
P-53-5併用する薬剤の特性に依って患者BMIがイメグリミンの薬効に及ぼす影響は変化する:国内第3相試験のBMI別部分集団解析
P-53-6イメグリミンとメトホルミン併用における消化器症状の解析:日本人2型糖尿病患者を対象としたイメグリミン第3相試験の事後解析
P-57-3当院におけるイメグリミン投与開始症例の処方の変化と服薬説明ポイントの考察
P-66-2メトホルミン投与中止後,イメグリミン投与中にミトコンドリア病と診断された一例
P-80-2新規経口糖尿病治療薬イメグリミンによるグルカゴン分泌促進効果の検討

ほとんどは リアルワールド,つまり理想的な患者集団を集めた臨床試験ではなく,実際に病院で患者に投与された報告です. ただし ツイミーグの販売元である住友ファーマ社から報告した臨床試験結果の事後解析も含まれています.

これらの症例全般をざっと眺めてみると,たしかにイメグリミン投与により,安定したHbA1c低下効果が実臨床でも確認されております.ただし その効果は,昨今話題のデュアルアゴニスト(チルゼパチド=マンジャロ)のような華々しいものではなく,どちらかと言えば穏やかな効果です.

少し目を惹くのは,イメグリミンは肥満型よりも痩せ型の人の方に効果が高い傾向がみられた(I-65-3, P-52-2, P-52-4)という点です. この傾向は,構造的には似ていても メトホルミンには存在しないものなので,イメグリミンに固有の性質なのか注目されます.

また症例報告で目立ったのは 副作用の消化器症状(下痢など)です.特にメトホルミンと併用した場合には多くなるようです.

ところがこの副作用もまた 痩せ型の人で発生頻度が高いようで,つまりはやせ型の人には効きやすいが,下痢症状も付随的に多くなるというわけです.

最後に,コロナ禍の影響,そして発売直後の出荷制限などの影響もあり,まだまだ投与実績が少ないなという印象です.この薬に期待されたインスリン分泌能の強化や,膵β細胞の増加,ミトコンドリアの活性化などという,他の薬物にはみられない効果があるのか,あればその程度はどれくらいなのか,これらの点が未だはっきりしません.

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