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応用問題 第180~182問と その正答は以下の通りでした.
おそらく多くの受験生がこの問題,特に 第182問は間違えたでしょう.
そう推測できる根拠があります.
2月28日に国家試験が行われ,その翌日から 栄養専門学校などからの『模範解答』が続々と発表されました.ところが,それらは第182問の正答を(2)又は(4)とするものが多かったからです.しかし,厚労省の正答は(1)でした.専門学校の講師ですら間違えるのですから,多くの受験生は誤答したと思われます.
従来の考えであれば
バターのような『動物性食品』,しかも(一部の人が毒物の一種と信じている)『飽和脂肪酸を50%も含むもの』を栄養指導で『たっぷりと塗りなさい』と指導していいはずがない,というのが従来の考えでしょう.
では,なぜ(1)の『バターを好きなだけたっぷり』が正答なのでしょうか?
絶対解と最適解
『飽和脂肪酸の過剰摂取は望ましくない』これは一般論として何も間違っていません.一般論は『絶対解』とも呼ばれます.正しいか正しくないかと問われれば,『間違いなく正しい』といえるものです.
しかし,一般論として正しければ,常にどんな場合でも正しいのでしょうか?
すべての年代層の,すべての症状・病態の人に,一律・画一的に『絶対解』を適用するのが本当に正しいのか,それを問うたのが今回試験の 180-182問だったのです.
『飽和脂肪酸をできるだけ控えるべき』はたしかに『絶対解』であるが,しかし,それは応用問題冒頭にある この患者の状況;
そして 第182問での患者の近況(最近食が細って必要なカロリーが摂れていない)をみれば;
絶対的なカロリー不足で,食欲も細ってきた,このままでは サルコペニア,重度の要介護に陥ってしまう可能性が高い,一般論ではなく,この70歳の女性のケースでは,『飽和脂肪酸摂取による 将来の疾患リスク増大』よりも 『今 目の前にある摂取カロリー不足』の方が優先するのです.
したがって,この状況では『飽和脂肪酸をできるだけ控えるべき』という一般論はまったく不適当であり,少しでも患者のカロリー摂取を増やすために『好物ならバターをたっぷり塗ってください』がこの場合の『最適解』なのです.
いつも『絶対解』=『最適解』とは限りません
『状況判断をし,自ら考えて,それぞれの局面で 何が最適解なのかを見極める能力があるかどうか』が,この問題の出題意図だったのです.
[5]に続く
コメント
やったー! たまたま全問正解できました。
それにしても、第182問の「模範解答」は、(2)または(4)が多かったんですか。(3)のマーガリンはあり得ないということなんですね。意外でした。
管理栄養士的には、マーガリンはバターよりも不可ということなんですか?
飽和脂肪酸とコレステロールが多いバターより、植物性脂肪のマーガリンを選びましょう、という方向性になるのかと思っていたのに。
それとも、患者の嗜好を重視して、患者が「バター」と言っているのだからバターを許容しようという流れなんでしょうか?
それにしても、大幅に摂取エネルギーが不足しているのに、バターを5gや週2回に制限してしまったら、エネルギー摂取量を増やせないじゃないですか。食パン半切れにたっぷりバターを塗ったところで、せいぜい10g程度? だとしたら、+90 kcalですよね。1,400 kcal設定からほど遠いエネルギー摂取量なのだから、もっと油脂を摂らないと不足分を補えないのに。
バターであれマーガリンであれ、「たっぷり塗ってもらいましょう」がポイントになると思ったわたしは、知識のない素人だからこその思考回路だったんですねw
オーソドックスな管理栄養士の発想は こうなのでしょう.
(もっとも そう教育されてきたのですから当然ですが)
『理想的な栄養バランスは必須』
それに加えて
『高齢者なのだから,さらに塩分は控えめに』
『高齢者なのだから,蛋白質,特に肉は控えめに』
『高齢者なのだから,もちろん脂質は控えめに』
『高齢者なのだから,さらに飽和脂肪酸は少ないほどよい』
『高齢者なのだから,トランス脂肪酸はもってのほか』
第182問は この感覚を逆手にとった質問でした.