現在多くの病院・開業医・クリニックでは,看板に通常の内科・外科などという診療科区分だけでなく,『~~専門医』という表示があるのをよく見かけます.
この『専門医』という表示は,もちろん 誰でも自由に名乗れるわけではありません. では その表示資格はどうやって得ているのでしょうか?
専門医とは[従来]
従来は,医学の特定分野の医学会が,それぞれ独自の制度を定めて,専門医を認定していました. 専門医に 特段法律上の規定などはなく,ただ 『~~医学会』という公益又は一般社団法人が,それぞれの認定基準を満たすと判断した人に,専門医を名乗ることを許可していただけです.
ところが,この『それぞれの学会が独自の制度』というところが乱立気味で,現在までに 100以上の『なんとか専門医』という名称があります.しかも,たとえば日本内分泌学会が認定する『内分泌代謝科専門医』と,日本糖尿病学会が認定する『糖尿病専門医』はどう違うのかとか,専門医ならどの分野であっても同じレベルの専門性を有しているのか等々,一般国民にはわかりにくいものでした.
新制度 専門医とは
そこで,厚労省が2011年から検討を進め,『中立の第三者機関が一元的に 専門医の認定を行う』ことに決定しました.
厚労省『専門医の在り方に関する検討会 報告書』[PDF] 2013.4.22.
この制度によって認定された専門医と,従来の専門医とは,まぎらわしいので,前者を『新制度専門医』後者を『学会認定専門医』と呼びます.ただし『新制度専門医』は,まだ制度が始まったばかりで,これから [養成]→[研修]→[認定]の手順を経て生まれてくるのでまだ存在していません. 何年かすれば,『新制度専門医』も増えてくるでしょうが,現時点では『学会認定専門医』の方が多いです.また将来は『学会認定専門医』は,移行期間を経て すべて『新制度専門医』に統合される予定です.
糖尿病専門医の教科書
今月 『糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第8版』が発売されました.
これは,2001年に日本糖尿病学会が『学会認定専門医』制度を始めた時にその研修資料として初版が発行されていたものですが,
- 『糖尿病診療ガイドライン 2019』(以下 GL-2019)が発行された
- 新制度専門医制度が始まった
ことから,それに対応して改訂されたものです.
『糖尿病診療ガイドライン 2019』は,その形式(Q&A方式)からもわかるように,エビデンスによって裏付けれたポリシー(原則)だけを述べたものであるのに対して,この『糖尿病専門医研修ガイドブック』は,具体的な診療・治療術を詳細に解説したものです(なので,540頁もあります). つまり,このガイドブックに記載する内容は,現時点で 日本糖尿病学会が専門医に求める事項を【もれなく,しかも最新の内容】[★]でまとめたものですから,今後の学会の方向を示すものと思われます.
[★] 初版 序文より
もちろん,このガイドラインは『専門医養成のための教科書』という性格上,いわゆる『定説』が記載の中心となります.せいぜい議論の分かれるような問題については,両論併記 又は 中庸 とするくらいでしょう. またカバーする範囲が非常に広いので最新情報をすべてリアルアイムに取り込んであるというわけにはいかないところもあります.
以下 このガイドブックの内容を,患者の立場からながめていきます.
[3]に続く
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