ブログ別館にも書きましたように,本年5月に開催される第64回日本糖尿病学会年次学術集会 [金沢]は,前回と同様の 全面WEB形式になると思われます.
直接 学会会場で行う講演・シンポジウムの場合は,講演後の質疑応答が なかなか面白いのですが,WEB方式ではそれは限られます(※).
(※)一応 オンラインでコメントや質問はできることにはなっています.
しかし,WEB形式ならではのメリットもあります.それは
すべての講演・シンポジウムを聴講できる
ということです. リアルの学会では,多数の講演が 一斉に 異なる会場で同時並行で行われますから,興味のある講演があっても,それらの日時が重なっていると,どれかひとつしか聞けないのです. しかし WEB形式であれば,オンデマンドで全部聞くことができます.
そこで,次回学会で予定されている 講演・シンポジウムをみるとこうなっています.
第64回日本糖尿病学会年次学術集会 プログラム一覧(予定)
会長講演 | 日々の診療での気付きから新しい糖尿病学を切り拓く |
特別講演1 | C.Ronald Kahn先生(ハーバード大学Joslin糖尿病センター最高学術責任者) |
特別講演2 | 門脇孝先生(国際公務員共済組合連合会虎の門病院院長) |
特別講演3 | 石黒浩先生(大阪大学栄誉教授) |
会長特別企画1 | インスリン発見から100年企画 |
会長特別企画2 | Meet the Cell Metabolism Editor Session |
会長特別企画3 | 日本の糖尿病学の歴史・到達点とこれからの課題を考える |
記念企画 | インスリン発見とインスリン分泌・インクレチン100年の歴史 |
公募企画1 | 病院全体の糖尿病力を上げる |
公募企画2 | 改定された食事療法ガイドラインの実践における課題 |
公募企画3 | COVID-19 のパンデミックを経験して ~私たちが糖尿病患者にできること、これからの診療・教育研究のあり方~ |
公募企画4 | 次に投与する薬剤は何か?~薬剤選択に迷う症例~ |
公募企画5 | 高度肥満症例[内科的治療 vs 外科的治療] |
ディベート関連企画1 | 高度肥満症例[内科的治療 vs 外科的治療](公募企画参照) |
ディベート関連企画2 | サルコペニアかつ腎症を合併した糖尿病:サルコペニアの治療を優先vs腎症の治療を優先 |
シンポジウム1 | 糖尿病医療における障壁(スティグマ)とアドボカシー |
シンポジウム2 | COVID-19のパンデミックと糖尿病診療 |
シンポジウム3 | テクノロジーが変える糖尿病診療 |
シンポジウム4 | 糖尿病領域におけるダイバーシティの推進 |
シンポジウム5 | 2型糖尿病の遺伝素因はどこまで解明されたのか? |
シンポジウム6 | ビッグデータで切り開く糖尿病診療 |
シンポジウム7 | IoT・AIを活用した糖尿病診療の可能性(日本医療情報学会合同シンポジウム) |
シンポジウム8 | これからの糖尿病食事療法における課題と展望 |
シンポジウム9 | 運動療法における臓器間ネットワークの役割 |
シンポジウム10 | 糖尿病治療において多様な経口血糖降下薬をどう使い分けるか? |
シンポジウム11 | メトホルミンと新薬の併用を活用した新しい糖尿病治療 |
シンポジウム12 | 糖尿病性腎症と糖尿病性腎臓病の新たな展開 |
シンポジウム13 | 糖尿病に合併する循環器疾患の病態と治療 |
シンポジウム14 | 高齢糖尿病患者に対する栄養管理と運動療法のススメ |
シンポジウム15 | 高齢糖尿病患者に合併する病態の特徴 |
シンポジウム16 | 1型糖尿病の病態研究フロントライン |
シンポジウム17 | 各ライフステージにおける1型糖尿病の病態と診療上の課題 |
シンポジウム18 | 妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠の管理最前線 |
シンポジウム19 | CDEJシンポジウム2020 |
シンポジウム20 | 地域全体における糖尿病力をあげる |
シンポジウム21 | Adipobiology-ベージュ細胞の謎に迫る |
シンポジウム22 | 骨格筋-QualityとQuantity・インスリン抵抗性からサルコペニアまで |
シンポジウム23 | 臓器間ネットワークによる代謝調節に着目した糖尿病の病態 |
シンポジウム24 | 腸管による代謝調節と糖尿病~インクレチンから腸内細菌叢まで |
シンポジウム25 | 膵β細胞量の調節機構と発生 |
シンポジウム26 | 膵ホルモンの分泌シグナル-生理と病態 |
シンポジウム27 | 糖尿病の病態-immunometabolism(免疫代謝学)からのアプローチ |
シンポジウム28 | 糖尿病性腎臓病の基礎研究Update |
シンポジウム29 | 糖尿病神経障害の新しい展開 |
シンポジウム30 | 糖尿病に対する移植医療・再生医療の可能性 |
シンポジウム31 | 肥満2型糖尿病と減量・代謝改善手術-その適応、効果と注意すべき周術期を含めた患者管理 |
講演・シンポジウムだけで46本. これ以外に教育講演がおそらく20本ほど行われるでしょう.また 製薬会社・医療機器メーカーなどが提供するWEBセミナーも多分30本ほど行われるはずです.
合計 100本近くの講演ですよ 奥さん < 誰 [(C) プーカプカ様]
やろうと思えば(やるつもりですが)これを全部 聴けるのです. 巷に流れるネット情報とは質・量 共に段違いです. もちろん学会情報だからといって,すべてを鵜呑みにはしません. しかし,学会という公式の場での講演である以上,そのほとんどは『これこれの医学文献・学術報告によれば』という根拠を示したうえでの発表です.文献の取捨選択に多少のバイアスがあるとしても,それは 読む方が自覚して受け取ればいいのです.
コメント
第64回学術集会のプログラムを見て虚しさを感じました。
肝心のアウトカム(下肢切断、失明、透析者の年間発生数)が低下しているのかが気になります。
これが明確に減少しないと、プログラムをもれなく聞く値打ちがあるのか、疑問に思います。
>プログラムを見て虚しさを
特に ここ数年の傾向なのですが,糖尿病の病理を基礎から解明しようという研究が非常に少なくなっています. これを反映して,世界の医学誌に占める 日本からの論文掲載率は低下傾向です.昔は 今ほど糖尿病薬が豊富ではなかったので,いきおい病理を研究して治療方針を探索するしかなかったのですが,現在では 薬の選択肢が広いので,どれか『アタリ』を選んでおけば,血糖値はそこそこ下がります. 患者も医師もそれで満足してしまっていますね.