糖尿病医療学[4]

ただ実行あるのみ

前回記事で紹介した『糖尿病医療学入門』の著者である,奈良県立医科大学の石井 均 教授は 1990年代に 米国 ジョスリン糖尿病センターのメンタルヘルスユニットに2年間留学されていました.

米国人の糖尿病とは すなわち肥満と同義であり,したがって いかに食事+運動療法で減量に成功させるかが課題です.ランニングでもビーガン食でも筋トレでも,手段は何でもいいのですが,とにかく肥満さえ脱却できれば,もともと米国人は『怒涛のようなインスリン分泌量』 なのですから,そうすれば確実に糖尿病は『治る』はずで,実際にもそうです.ですが もしも200kgに迫ろうかという体格の米国人糖尿病患者が肥満と戦おうとすれば,それがいかにつらいか,これもまた事実です.それでも 正解は『減量』というただ一つの道しかないのです.

ビジネスコンサルタントである ホリデー様 なら,迷うことなく これは

『問題の所在が明らかで,達成すべき課題も解決法も明確,ただその実行が著しく困難なケース』

に分類されるでしょう. ここでは医師が直接できることは何もありません. ただ 本人の意思と決断だけが決定的因子なのです.だからこそ数多くの失敗・挫折を経てジョスリン糖尿病センターが確立したのが,『行動心理学でアプローチする糖尿病医療学』であったわけです.

(C) アキヒロ さん

「患者が自信と確信をもち,どんなに辛くても肥満解消にとりくんでもらうための,ドクターの最善行動とは何なのか」

これを追求した答えが米国の糖尿病医療学です. 患者にとっても医師にとっても 実行がおそろしく難しい困難な課題ですが,しかし正解が存在するということは それだけでまだしもHappyです.

日本の糖尿病医療学

日本糖尿病学会と少しまぎらわしい名前ですが,石井 均先生は,日本糖尿病医療学学会 を設立し,

その代表理事として,糖尿病医療学を全国の医師に広めようとしています.ただし この学会は,設立からまだ5年ほどと日が浅いです. 学術集会も開かれてはいますが

  • 『学会参加にあたっては守秘義務誓約書に署名が必要』
  • 『患者の参加はお断り』

などと外部に対しては完全にクローズですので,この学会でどのような議論が行われているのかは不明です.

ただ 現時点で唯一発行されている学会誌「糖尿病医療学」第1巻を見ると,『患者個々の症例に応じて,患者自身が問題解決の力を得られるよう行動変容を促していく』にはどうすればいいのかを医療関係者のみで検討している段階のようです.よってスタイルやポリシーの確立以前の段階であり,症例検討による手探り状態かと思われます.

なぜならおそらく石井先生はじめこの学会の会員 医師の先生方は気づいているからです.
米国と異なり,日本の糖尿病は答えが一つではないことに.

[5]に続く

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