パネルディスカッションといえば,通常は 講演演者による討論ですが,冒頭 異例にも門脇理事長のコメントがありました.
門脇理事長コメント
今回のガイドライン改訂について,糖尿病学会の事前説明のやり方は反省している.
今回改訂の最大の特徴は,従来の「標準体重を設定し,それに対して数式でカロリーを設定する」,この枠組みを廃止することにある.すなわち画一性を廃止して,
『一律から個別へ』という原則の転換が目的であって,
数値の改訂というレベルのものではなかったはず.
また,75歳以上のBMIは25付近とするという改訂原案は,本日の議論を受けて修正すべきと考える. 従来は,高齢者でBMI=25以上の人がいれば,一律にBMI=22にすべきとしてきたのだが,[ぞるば注:そうすると,極端な低カロリー食となるから]それではフレイルの可能性を高めてしまうことになる.だから 何が何でもBMI=25を22にさせるという従来のやり方を是正するというのが改訂の趣旨だったのだが,逆を言えば 現在BMI=22の高齢者をわざわざBMI=25にする必要性はないだろうと感じた. よってこの部分については,当初案を変更して,75歳以上の高齢者は BMI=22-25と幅を持たせてよいのではないか. もちろん,これは改訂委員会でよく議論のうえ決めてもらう.
パネルディスカッションで出た意見
・100歳の長寿者を見ると,肥満者は少ない.100歳に近づいたら突然痩せたのではなく,昔からそうだったのだろう.BMI=25-27で死亡率低いというが,QOLが低くては意味がない
・ 腎症患者を観察すると,よく食べている人は元気だ. しかしよく食べるから元気なのではなくて,元気だからよく食べられるのだろう.食が細い人に無理やり食べさせて太らせる必要はないと思う.
・ 高齢者は,とにかく食事の量が極端に少ない人が多い.一方で甘いものや好物には手をのばす.食事指導の必要性は変わらない.
・ 肉が嫌いな人にまで むりやり肉を食べさせることはない.他の蛋白源を十分摂ればよいことだ. 結局は,本人の自覚が結果を左右する.
・腎症=低蛋白食というのは,現在のように各種の腎症薬がなかった時代に採用されたにすぎない. 他に手段がなかったからにすぎないのではないか.
・今回改訂の趣旨は,一律規定をなくして,医療側の裁量範囲を広げることにある. これにより,患者の年齢・体組成・病態・アドヒアランスなどをよく観察したうえで,その人にもっとも適切な食事療法を個別に『考える』ことが重要になっていくだろう.
以上が 食事療法シンポジウムの発表概要でした
この講演,および 討論を聴いていた 参加者の反応,そして私の感想を次の記事でとりあげます.
[食事療法関係 その5]に続く
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