糖尿病学会 感想 1

【この記事は 第68回 日本糖尿病学会年次学術集会レポートではなく,講演を聴講した ぞるばの感想です. 】

2025/05/29-31に岡山市で開催された 第68回日本糖尿病学会 年次学術集会に野次馬参加してきました. 奉還町商店街のお好み焼きは格別でしたが,それ以外にも興味深い話がたくさん聞けたので 情報を整理がてら 感想を述べてみます.

糖尿病治療における人工知能およびデジタル医療の展望

学会1日目午前には このシンポジウムを聞きました.

堅苦しいタイトルの講演が並んでいますが,中身は分かりやすいものでした.

S7-1 糖尿病診療におけるデジタル医療:いまとこれから

徳島大学 松久宗英先生の講演です.
松久先生は,糖尿病に関わる医療情報技術とその活用をめざす日本糖尿病インフォマティクス学会(JSIDM)の理事長でもあります.

講演では,厚労省が推進する 「全国医療情報プラットフォーム」構想を実現するための課題などが解説されました.

第183回社会保障審議会医療保険部会資料

今後 少子・高齢化などで ますます医療現場での情報共有必要性は高まるのですが,逆に人手不足は深刻化していきます.したがって従来の電話・FAX・書類などの人手を要する手段に頼っていては,新たな情報共有などは不可能,それどころか今できていることですらできなくなっていくわけで,ITの活用以外に解決手段は存在しないという説明でした.

しかし上図の構想を実現するために,山積する課題の中で,何より大変なのは「電子カルテデータの共有」です.
ところが 日本では電子カルテの大手ベンダーの製品で合計70%ほどのシエアを占めていますが,それぞれの電子カルテのデータは,他社の電子カルテとは まったく互換性がありません. 相互データ変換ツールなどでデータ形式の共通化などは進められているものの,そもそも基本データ構造からしてまるで違うので,相互利用できないのです.一旦A社の電子カルテを導入したら,もう絶対に 他者の製品に乗り換えられないように,ということでしょうか.

「相互利用できない」といえば,戦前の帝国陸軍と帝国海軍とは相互にいがみあっており,

陸海内ニ争ヒ、余力ヲ以テ米英ト戦フ(佐々淳行『連合赤軍「あさま山荘」事件』文藝文庫、1999年、207頁)

という言葉を思い出しました. 陸軍の兵器を生産する工場では,部品などを海軍に横流しされないように,わざと海軍とはまるで違う規格で製造させていた,もちろん海軍でも 逆もまた然りという有様なので,軍需工場では 同じような部品なのに 常に陸軍用と海軍用の両方を生産して在庫しなければならなかったようです.

(C) 金時 さん

部分最適のみに目を奪われて全体最適を考えないのは,その頃から我が国のお家芸だったのですね.

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