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今年の2月28日に行われた 第35回 管理栄養士 国家試験 で,『糖尿病』に関連する問題と正答を検討しました が,一昨年までは必ず出題されていた
糖尿病の唯一の正しい食事療法は 『食品交換表』による 炭水化物60%のカロリー制限食である
という考えは一掃されました.
ただし,そこから更に一歩進んで,『では 糖尿病の食事療法はどうあるべきなのか』という観点からの出題もありませんでした. 本当は将来を担う若い管理栄養士の卵には,これが一番必要かと思うのですが,何しろ日本糖尿病学会は『糖尿病診療ガイドラン 2019』で抽象的に『個別化が必要』と述べただけで,そこから先の具体的な指針がありませんから,出題のしようがなかったということなのでしょう.
応用力問題
ところで,今回の国家試験で異色の出題がありました.2002年から導入された『応用力問題』の中の一つです.状況説明の短文を手掛かりにして,その後の連続した問題を解きなさいというものです.
この問題です.
皆さま.正答できますか?
コメント
管理栄養士の勉強をしていれば簡単なのでしょうが、知識のないわたしには全く分かりませんでした。そんなわたしが解答すると…
第180問 (1)エネルギー摂取量が少ない
第181問 (1)煮物を炒め物に替えるなど、油脂類の摂取を増やしましょう
第182問 (1)はい、たっぷり塗ってもらいましょう
全く分からないのですが、パッと見て「これでは1,400 kcalにほど遠いだろう」と感じたので、「エネルギー摂取量が少ない」という視点から解答してみました。
181問は、(2)の卵と悩みました。この食事内容でたんぱく質が40g/日を満たしているかどうか?が分からなかったので。ただ、この患者は糖尿病ではなさそうなのに、エネルギー1,400 kcal/日でごはんが茶碗小1杯(100g)と少ないですよね。糖尿病のわたしでも同じエネルギー設定でごはん140gの指定でしたから。ということは、100g以上ごはんを食べるとたんぱく質量が増えてしまうのだと推測しました。となると、卵はたんぱく質の問題からNGとなり、油脂で摂取エネルギーを増やすことになると思います。
182問は、(3)のマーガリンと迷いました。「飽和脂肪酸は悪!」という視点に立つと、バターは不可でマーガリンになると思います。最近のマーガリンはトランス脂肪酸フリーを謳っているようだし。エネルギー摂取量を増やす視点から考えると、バターにしろマーガリンにしろ「たっぷり塗ってもらう」になると思います。1日食パン6枚切半分だと、いくらたっぷり塗ったとしてもしれているでしょうし。
さて、正解は???
ちなみに、犬の場合ですが、腎臓病用の療法食だとたんぱく質が少なく脂質が多くなっています。腎臓が悪いのに消化不良を起こしたときが大変です。消化ケア用の療法食は、腎臓ケア食と真逆だからです。
愛犬のかかりつけ獣医師が、「自分の父親が糖尿で透析をしているが、人間が腎臓を悪くすると炭水化物しか食べられなくなって大変。糖尿なのに」と苦笑いしていたことを思い出しましたのですが、181問の解答の中には「ごはんの量をもっと増やしましょう」という選択肢はないのですね。獣医師の父親はたんぱく質量とどう兼ね合いをとっていたのかしら。でんぷん米だったんですかね…?
>第180問 (1)
>第181問 (1)
>第182問 (1)
おめでとうございます.全問正解です.
本日の記事(4/11 [4])にも書きましたように,この応用力問題は 論理的に考えれば全問正解できるはずです.
第180問のデータから,どうみてもこの女性は 1日1,000kcal程度で,医師の1,400kcal指示を満たしていません.
そして,摂取カロリー不足によるサルコペニア寸前(=一人で外出できない)という状況から,以降の問題はすべてカロリー不足解消を第一優先にして考えるべきなのです.
ところが;
>「飽和脂肪酸は悪!」
>「飽和脂肪酸は少なければ少ないほどよい」
という教科書知識をガチガチの絶対的真理としている人は,必ず 第182問で間違えたでしょう.
親切にも第181問でヒントを出してくれていますが,もしも 第180問,第182問だけだったら,そういう人は100% 第182問を間違えたと思います.