よし! 明日からしっかりやろう!~日本病態栄養学会報告より

福田正博先生の報告です.でもサッカーの話ではありません.

今回の病態栄養学会で,事前に公開された抄録集を見て,もっとも期待したのがこの報告でした.

P-232 2型糖尿病患者における食行動と先延ばしとの関連[武庫川女子大学/ふくだ内科クリニック]

ふくだ内科クリニックの福田正博先生は,糖尿病の療養指導にもっとも力を入れている方です.この記事シリーズでも紹介した『糖尿病医療学』の分野では,奈良県立医科大学 石井均先生と並んで 第一人者でもあります.

福田先生の治療スタイルについては,下記をご覧いただければ理解が早いと思います.

2本目の記事で,福田先生はこう述べています.

物事を分析する人だなと思える患者さん、「光秀型 」 ですが、その方には血糖値のデータを具体的に見せて「ここまで上がると合併症のリスクが増えますよ」という話し方をすれば納得してくれることが多いです。

感情表現が豊かな「信長型」の方だと、そういう話をしても聞いてくれないので、まずはしっかり話を聞いてから、簡単な提案から始めていくようにしていますし、

「秀吉型」の患者さんには、血糖値がよくなったら「すごいですね」と褒めたり(笑)。

徹底して患者の気持ち・心理を重視するのです.

そこで今回の学会報告は,先延ばし行動尺度と,日々の食行動との相関性を検討しています.

先延ばし行動尺度(GPS)とは

誰しも やらなければいけないのだが,あまり気の進まないことは,ついつい「面倒だなあ,いいや明日やろう」ということがあります. この先延ばしに陥りやすい傾向を数値で定量化する方法が GPS = General Procrastination Scale(先延ばし尺度)です.

もともとは米国York大学のClarry H. Lay教授が考案したアンケート形式のものですが,オリジナルの方法では,日本人にはなじまない質問が多かったので,それが日本語化されています

方法は実に簡単で;

  • もっと前にやるはずだった物事に取り組んでいることがよくある
  • どたんばになって,誕生日プレゼントを買うことがよくある

等の質問に,「そう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あまり思わない」「まったくそう思わない」など5択で解答して,その結果を集計するものです.

食行動とは

この報告では,食行動の特徴を下記の7カテゴリーに分類しています.

耳の痛いことばかり並んでいます. この報告は,『物事を先送りする傾向の強い人は,どういう食行動をとりやすいのか』その関係を調べてみたものです.

対象

糖尿病患者147名に回答してもらいました,
男女で人数は違いますが,それ以外はできるだけよく似た条件に揃えています.

結果

男性と女性では少し違う結果でした.

男性では;

  • GPSで点数が高い人,すなわち 先延ばし行動をしやすい人ほど,食行動の『リズム異常』=食事が不規則になりやすい傾向が見られました( r = 0.389; p < 0.01).

女性では;
GPSで点数が高い人,すなわち 先延ばし行動をしやすい人ほど,以下の食行動をとりやすい傾向が見られました.

  • 空腹感・食動機[すぐに空腹を感じる] ( r = 0.307; p < 0.05)
  • リズム異常[食事が不規則] ( r = 0.304; p < 0.05)
  • 満腹感覚[いくら食べても満腹にならない] ( r = 0.297; p < 0.05)
  • 代理摂食[空腹ではないのについ食べてしまう]( r = 0.296; p < 0.05)

考察

この報告では,「糖尿病改善のためには,おおむね減量・食事節制・禁煙 などと,あまりやりたくない,つい先延ばししてしまう事柄が多い.しかし長い目でみれば,先延ばし行動こそが 血糖コントロール悪化につながりやすい」としていました.

感想

いやあもう,耳がジンジンするほど痛いです. GPSテストというものもやってみましたが,しらねのぞるばは全質問に満点解答で,「極限の先延ばし人間」でした.『明日できることは,絶対に今日 やらない(明日になれば…以下同文)』がモットーですからね.だてに『しらねの』ぞるばを名乗っているわけではないのです. 食行動の方も,糖尿病を自覚する前までは,これまた全項目該当していました.

しかしねぇ『わかっちゃいるけどやめられねぇ』なのですよ

『スーダラ節』
(C) ユニバーサル ミュージック ジャパン

[学会報告の紹介が続きます]

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